ミリが名前を口にした男の子が、またひとり学校から消えた――
主人公ヤエは、クラスメートのミリが名前を口にした男の子が、いつのまにか学校からいなくなっていることに気づきます。
ミリはどちらかというと女の子には嫌われるタイプの女の子。男の子には超人気で通称女王様と呼ばれています。すこし引っ込み思案で、まじめな性格のヤエとは正反対。
奇妙に思っていたある日、ミリの口から、ヤエが気になっている男子コウの名前がでてきてしまいます。
そして、ミリとコウはふたりして、学校から消えてしまったのです。
音信不通で、学校にもこなくなったふたりのことが、気になってしかたのないヤエ。
そんな中、街でコウの姿を見つけ、その後を追ったヤエは、不気味な場所に足をふみいれることに――
2018年に国際アンデルセン賞を受賞した、「魔女の宅急便」で知られる角野栄子さんの新境地!
スマホやLINEといった現代的なキーワードの散りばめられた本文を、いったいどんな話なんだろうとワクワクしながら読み進めていくと――
学校から消えた人たちが通っていた、秘密のたまり場。
こっそり売買される、謎のゲームへのログインパスワード。
生きた人間にうりふたつのフィギュア。
こ、これは、SFホラー!? 青春ファンタジー!? サイコスリラー!?
日常のすぐとなり、なんの境い目もなくそこにある、雑多で退廃的な異世界を中心にして、たしかにナニカが起きている。ドキドキしながら、どんどんページをめくってしまいます。
しかし、ヤエが真実を追い求めても、手に入るのはウソかホントかもわからない手がかりばかり。
正体のわからない不安だけが募りつづけ、緊張がピークに達したとき、ヤエもまた自分を見失い、境い目なしの世界に深くのめりこんでいくのです……
「この小さな機械を手に入れたとき、私は、ほんとうの私に、自由な私になれると思った。(中略)それなのに、今、私はそれにがんじがらめに縛られ、自分をコントロールできない」
スマホを手に入れたことによって、友だちの行動に自分の生活が支配されていくヤエの様子には、生々しい怖さがあります。
これは妄想? それとも現実?
境目のない地続きの世界で、「異世界」の側はどちらなのでしょう……?
(堀井拓馬 小説家)
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ラスメイトのミリと意気投合したヤエは、母の反対を押し切ってスマホを手に入れLINE友だちになる。しかし、そのうちミリが学校を休むようになり、憧れの男子コウまでも休みがちに……。何かがおかしい……ミリも、コウも、どこへ行ってしまったの? そんな折、街でコウを見かけ後を追ったヤエが飛び込んだ建物は、フィギュアだらけの店がゴチャゴチャの並んだ異空間のようなところだった──。
スマホやゲームなど、バーチャル世界が膨らむ現代に、熱に浮かされたような10代の焦りや不安とたった一人で格闘する少女の内面を描く。国際アンデルセン賞受賞作家による書き下ろし長編作品。
◆編集者コメント◆
昨日と同じに生きているつもりが、いつの間にか違う世界に取り込まれているかもしれない。境い目なしに異界が口をあけているかもしれない。だれもが通り抜ける10代の不安と葛藤を正面から描き、そのただ中にいる世代にとエールを送る1冊です。
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