「ことしも あえた なつのおと」
目が覚めると元気なセミの声。窓際では風鈴の音が鳴り、食卓のお茶が麦茶に変わってる。ああ、夏が来たんだな、と感じる朝。
「あーそーぼー」
青々と茂った草の道を通り、堤防を走り抜け、遊びに行くのは、もちろん海! 待ちに待ったぼくらの季節! 海開きまではあと少し。海の家の開店準備を手伝って、スイカとおにぎりをごちそうになってくると、とたとた、とたたん…夏が雨をつれてきた!
どこまでも広く澄みきった「夏の青い空」。この景色を見ているだけで圧倒されそうになるのだけれど、強い日差しにどっしりと構えた古くて大きな民家、走ればすぐに見えてくる海と立ち並ぶ迫力の松の木、そこに描かれているのは豊かな自然の残る四国の夏。行ったことはなくても、どこか懐かしさを感じてしまうのは、とても具体的で魅力的な絵だからでしょうか。
さらに耳を澄ませば、氷の入ったコップの音や道を駆けていく少年たちの足音が聞こえ、絵を眺めれば、ちりんちりりんと鳴らす風や汗ばむ程の暑い空気を感じることができて。徳島に在住されている作者羽尻利門さんがあざやかに切り取った夏の一日は、子どもの目にも大人の目にも眩しく、読むたびに胸が高まるのです。
「夏がきた!」
今年もまた、そう思わせてくれる日本の夏の絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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