アルバムの中でこちらを見てほほ笑んでいる女の子は、髪を一つに束ねて、リボンで結んでいる。服だって、なんだか私の服とちがう。
「このこ、おかあさんなの?」
女の子はおかあさんにたずねます。だって、お人形だって、お買いものに行くお店だって、お家のなかだって、今とちがうみたい。だけど、おかあさんは言うのです、大切なことはなにもかわっていないって。
「そらは あおくて、くさは みどり。
ゆきは しろくて つめたくて、
おひさまは まぶしく あたたかい。
いまと おんなじだったのよ」
寝る前におかあさんが明かりを消しにきてくれるのも、暗い部屋のおふとんの中で耳を澄ますのも、みんな今の私といっしょ。おばあちゃんも、ひいおばあちゃんも、やっぱり今の私といっしょ。それって、ほんとなの……?
アメリカの児童文学作家シャーロット・ゾロトウが1963年にかいたお話が、なかがわちひろさんの訳と杉浦さやかさんの絵で生まれ変わったこの作品。舞台はアメリカだけれど、どれだけ時代をさかのぼっても変わらないもの、普遍的なもの、そして親子の深い結びつきというのが、女の子とおかあさんの会話を通して、そして各時代の女の子たちの表情を通して伝わってきます。
どこを切り取っても愛らしいこの絵本だけれど、眺めて楽しい、そして口に出して気持ちいいのは、女の子がはだしで青空を見上げるシーン!(ブランコに乗っていたり、寝転んでいたり、走り回ったり……ポーズはそれぞれだけどね。) 子どもたちへ、そしてその子どもたちへ。この絵本が読み継がれていくことを思うと、なんだかふんわりくすぐったいような、幸せな気持ちになってくる一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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