獣医師であり写真家でもある竹田津実さんが、北海道の自然のなかで暮らしながら出会った動物たちとの交流を描く「北国からの動物記」第7弾。
今回の動物はタヌキ。
キツネの生態を研究している著者がタヌキと出会った場所は、16年ものあいだ観察してきた、とあるキツネの巣。
その巣から、なぜだかタヌキが顔を出したのです。
そんな驚くべきエピソードからはじまって、そのの生態を観察するために、著者が森でタヌキを追う写真絵本。
タヌキがキツネと共存するための工夫とは?
キツネとタヌキの子育てや食べ物の違いは?
タヌキ同士の絆の証、「ため糞」とは?
観察するなかで彼らの見せた特徴的な行動から、ときにキツネとの比較を用いて、わかりやすくタヌキの生態を描き出していく本作。
様々な季節における彼らの姿を写した写真は、少しでも音を立てればその光景がたちまちに失われてしまうというような緊張感をはらんで、大自然の繊細さを伝えています。
タヌキを観察することも、写真を撮ることも、どれもがけして容易に成し遂げられたわけではありません。
森を知り、動物を知る著者でさえ、タヌキの巣を見つけるのはひと苦労。
豊富な知識と経験を元に、地道で実直な観察の積み重ねから生まれた一冊だというのが、ひしひしと伝わってきます。
著者の活動を通して、自然がただ力強くきびしいだけではなく、同時にとても影響を受けやすい存在であり、ありのままの姿を見るには大変な工夫が必要なのだと知ることができます。
自然と動物に対する真摯な愛情にあふれたこの作品。
著者とタヌキとの触れ合いは、ただ彼らの生態だけでなく、自然との付き合い方を私たちに示してくれています。
(堀井拓馬 小説家)
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