旅するかき氷屋のカメレオンが、リヤカーの屋台を引いています。
中に並ぶ、世界中であつめた色とりどりのシロップが自慢なんですって。
元気のないサルくんがやってきて、カメレオンは黄色いかき氷をすすめます。
「レモンにバナナ、はちみつをつかった“たいようかきごおり”をめしあがれ」
食べてみると……あら不思議。
そこはかがやく黄色の世界!
カメレオンも黄色になってまどろんでいます。
砂漠の太陽をたっぷりあびて、顔色がよくなったサルくんが元気いっぱいにとびあがっています。
シロクマくんやコアラさん、ウサギさん……。
いろんな動物がやってくるたび、カメレオンは彼らの体調や症状にぴったりのかき氷をすすめてくれるんですよ。
「あまいソーダとうみのしおをつかった “うみかぜかきごおり”」とか、「ぶどうとブルーベリーをつかった“よあけかきごおり”」とか……。
こんなかき氷、食べてみたい!
そんな頼りになるカメレオンにも悩ましいことがあるようで……いったいどんな悩みを抱えているのでしょうか。
体の色を変えることができるという特徴を持つ、カメレオン。
ページごとにいろいろな色に美しく変化します。
落ち着いた色から、はっとするほど華やかに見える色まで。
半開きのような目の表情もすこしずつ変わって、知的に見えたり、悲しそうに見えたり。
独特のタッチに魅了されます。
作者である谷口智則さんは大学時代に日本画を専攻しており、日本画の色調や空間表現から学びつつ、今の作風を作り上げてきたそうです。
「もしもじぶんにじしんをなくしたら……」
こんな言葉と、カメレオンの悩みややさしさに心が震える絵本。
子どもはもちろん、大人にも、自分のための大事な本としておすすめしたくなる1冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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