いつもの散歩道、ふと見上げた視線の先にいたのは野良猫。
じっと見ていると、向こうもこちらを振り向き……目が合った。
広い野原で草を食べる牛たち。
気が付くと……自分がかこまれている! べろん。
草かげに見つけたカマキリ、柿の実をかじるネズミ。
高い木の上に見えている可愛い顔、 雪だるまのような姿のあの子も。
「みたら」
「みられた!」
なんて迫力のある目、なんて緊張感のある空気。こちらがそっと見て楽しんでいたつもりが、ふと目があってしまう。じっと見られてしまう。嬉しいような、くすぐったいような。ドキッとするけど、何かが通じ合ったような喜びもあり。
大好きな生きものたちとのささやかなコミュニケーションを、大胆に切りとり、高揚感あふれる一冊の絵本にしてしまったのは、木版画で作品を生み出す絵本作家竹上妙さん。竹上さんご自身が、かつて長野で牛にかこまれたときの衝撃をきっかけに「見たら見られた」というテーマでの作品づくりに取り組まれてきたのだそう。その集大成とも言えるこの絵本では、ダイナミックで迫力があるけれど、どこかユーモラスな表情をした動物たちの魅力が存分に味わえます。鮮やかだけれど、風合いのある色味もとっても素敵。
……あ、見られてる!
表紙を見るたびに、ハッとしてしまうのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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