むかしむかし、イタリアに住んでいた曲芸一家の男の子のお話。
男の子の名前はアンジェロ。一家は曲芸を披露しながら幌馬車でイタリア中を旅しています。
曲芸一家はどこに行っても人気者。観客は双子の兄さんベッポとベンノの絶妙なバランス芸に息をのみ、父さん、母さん、おチビのサンドロが奏でる愉快な音楽に酔いしれます。でもなんといっても曲芸の主役は、綱の上でロープダンスを披露するアンジェロ!緊迫の綱渡りに大観衆はいつも拍手喝采。大盛況なのです。
ある日、アンジェロは建物の窓から自分を眺めている不幸な少女アンジェリーナに出会います。
彼女の夢は、アンジェロのようなロープダンサーになること。でも彼女には一緒に暮らすとっても意地悪なおじさんがいて・・・。
ヨーロッパの昔を舞台に曲芸師アンジェロとアンジェリーナの出会いをドラマチックに描いたのは、
ロアルド・ダールさん作『チョコレート工場の秘密』の挿し絵で有名なイギリスの児童文学作家クエンティン・ブレイクさん。谷川俊太郎さんの翻訳がついたこのシリーズは、ブレイクさんお得意のユーモアたっぷりの人情劇が光るどこか懐かしい世界。例えば夜がきて曲芸の演目が終わると、アンジェロ一家は家族仲良く木の下で晩御飯を食べるのです。アンジェロとサンドロは、父さんのギターの調べに耳を傾けながら焚き火の前で母さんの手作り料理を食べ、その横で兄さん達が卵でジャグリングを特訓していたり。耳をすますと焚き火の音や父さんのギターまで聞こえてきそうな幸せな家族の風景。誰もが魅了される曲芸師の華やかなパフォーマンスの裏側で見せる素朴で実直な心優しい人柄がとても魅力的に描かれています。
さて、曲芸師のアンジェロと曲芸師をめざすアンジェリーナはその後どうなったのでしょう。続きは、ブレイクさんの子どものように自由で無邪気な線と色が躍る絵本の世界で見つけてくださいね。
(絵本ナビ編集部)
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