ふたつの家族のねずみたちの、夜のちょっとした冒険を描いた、マリー・ホール・エッツの絵本です。
ドキドキするほどのねずみたちの勢いと、ちょっぴり哀れな結末がおかしい、エッツ作品のなかではいっぷう変わった絵本です。
ジョニーの家の地下室に住む、グレイさんと奥さんとその子ねずみ。そしてテイリーさんと奥さんと子ねずみ。
計6匹のねずみたちが、夜の子ども部屋で、ジョニーが遊んだあと片付けずにいたおもちゃを見つけます。
「ねずみにぴったりののりものだ!」
そう思ったねずみたちは、おもちゃの飛行機にのり、トラックにのり、そして汽車にのり……。
ブルンブルン、ゴーゴー。
ぴったりサイズののりものでかけまわっていたねずみたちが、まさか痛い目にあおうとは!?
マリー・ホール・エッツ作品のなかではかなりカラフル。
赤や黄色が、砂色の背景に映えて色あざやかです。
真夜中のミステリアスな雰囲気がかきたてられます。
繰り返される「グレイさんと奥さんとその子ねずみ」「テイリーさんと奥さんとその子ねずみ」の言い回しのリズムで、読者はいつのまにか絵本の世界にひきこまれます。
大きく描かれた、ジョニーの無邪気な表情が可愛らしい!
2、3歳くらいのお子さんから、大人まで一緒に楽しめそうです。
アメリカでは1964年に出版されましたが、これまで未邦訳作品のひとつでした。
名作『もりのなか』や『わたしとあそんで』、『ロベルトのてがみ』などの控えめであたたかいタッチとはひと味ちがう、おしゃれな絵の世界が楽しめますよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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