スイス生まれの絵本作家、デュボアザン描く、カラフルな動物たちの姿が楽しい絵本です。
ある日、一羽のめんどりが機嫌よく庭で餌をつついていると、ちょうど近くに大きなみずたまりが広がっていました。
めんどりはみずたまりをのぞきこみ……「コケーッ! まあ、たいへん! かわいいめんどりが、みずのなかにおっこちてるわ!」
あわてためんどりは、納屋のそばでとうもろこしを食べている七面鳥に知らせます。
走って見に行った七面鳥は「ちがう! おっこちてるのは、かわいいめんどりなんかじゃない。おおきなりっぱなしちめんちょうだ!」
さあ、今度は、七面鳥の話を聞いたぶたがよたよたやってきます。
ぶたもまた、みずたまりをのぞきこみ……。
だんだん動物は増えて、上を下への大騒ぎ。いったいどうなっちゃうの!?
横長の画面(右片面)いっぱいに描かれた構図が魅力的。
白い大きなみずたまりに次々動物たちが顔をのぞかせ、「たいへんだ!」「(自分とおなじ動物が)おっこちてる」「たすけてあげなきゃ!」と思い込みます。
左から、右からと、それぞれやってきてのぞきこみ、その後の右往左往ぶり、大さわぎぶりといったら!
解決してそれぞれに去っていく姿もチャーミングです。
そしてまた動物たちのなきごえが楽しいこと!
「コケーッ!」「クルクルッ」「フゴ、フゴ! ブヒ、ブヒ!」と声に出して読んでみれば、そのおもしろさがきっと子どもをとらえること間違いなし。
(ちなみにわが家の3歳の男の子は「ブタがすき!」だそう)
文を書いたのはアデレイド・ホール。原書が出版されたのは1965年だそうですが、じつに構成がたくみで、あざやか。
おはなし会で重宝しそうな1冊です。
絵を描いたデュボアザンの魅力もあいまって、のどかな農場の風景の中に、あかるい幸福感が感じられます。
自然のふしぎさや、生きているおもしろさがさりげなく伝わってくるハッピーな世界観、子ども時代にぜひ味わってもらいたい一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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