最初に登場するのは、大きくて立派なトリケラトプスの骨格化石。隣には小さな化石もあります。
トリケラトプスのお父さんとその子どもでしょうか。
大人気恐竜絵本作家として活躍されている黒川みつひろさんは、この化石から様々なことを読み解き、更に物語を想像していきます。
例えば、このトリケラトプスのお父さんのツノには、ティラノサウルスにかみつかれたような傷あとがあります。
子どもを守るために、はげしく戦った勇者の証なのでしょうか…。
ここは林の中のトリケラトプスの巣。
たまごから生まれたあかちゃんたちをお父さんとお母さんがじっと見守っています。
やがて大きく育っていった子どもたち。大きくて強そうなお父さんが、ツノつきの試合に出ないのがちょっぴり不満です。でもお父さんは、子どもたちを守るために、ちゃんとひとりでトレーニングをしているのです。
ある日、お母さんたちは子ども達を連れて、おいしい草がはえているエサ場に出かけることになりました。はしゃぐ子どもたちですが、背後には恐ろしい肉食恐竜ティラノサウルスが子どもたちをじっと狙っています。お父さんはどこ?ある時とうとう、攻撃が始まって…!
トリケラトプスVSティラノサウルスの迫力満点の戦闘シーン。そして、愛情にあふれたトリケラトプス家族の絆。黒川さんが描くのは、今回も恐竜が好きな子どもたちにはたまらない場面ばかり。なかでも黒川さんご自身がトリケラトプスが大好きだというのだから、力も入っているはずです。
でもこの作品には、更に興味深いポイントがあるのだと、巻末の解説で教えてくれています。
トリケラトプスが戦闘態勢になり興奮すると、エリ飾りが赤く目玉のように発色しています!
また、ティラノサウルスには、なんと立派なタテガミがあるのです!!
たくましい筋肉で覆われた体に輝いているタテガミ。こんなティラノサウルスは初めてみたけれど、かなりカッコイイ。
実は、どちらも最近発表された説を考慮して描かれたものなのだそう。
こんな風に、恐竜の研究は常に進んでいて、次々に新しい化石が発見され、学説が発表されて。そして、そのたびに想像の中の恐竜の姿も変化していくのです。
恐竜の世界はまだまだ未知。新しい発見を切り開いていくのが、この絵本を読んでいる子どもたちなのかもしれない。そう考えるだけで、本当にワクワクしてきますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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