フランシスさんは、森のかたわらに住み、一日森の絵を描いて過ごしています。
えんぴつと消しゴム、画用紙を持って出かけます。
倒れてコケが生えたマホガニーの木の表面、からみあって伸びているヤシの木とイチジクの木。ひとつひとつていねいに描きます。
画用紙を森の植物の絵で埋めつくすことが、フランシスさんの幸せなのです。
そんなフランシスさんにとって、森が破壊されることは耐え難い苦しみでした。
ある日、フランシスさんはまっくろに焼き払われた森に行き着きます。
生き残ったモアビの木の下で思わず涙するフランシスさん。そのとき美しい奇跡が起きて・・・。
この絵本は、森を描いたリュック・ジャケ監督のドキュメンタリー映画<il était une forêt>にインスピレーションを得て、描かれています。絵本のフランシスさんは、この映画の中で進行役をつとめる植物学者フランシス・アレ氏がモデルなんだそうです。
花柄のテキスタイルの布地の上に描かれた木々は、花や葉や枝が重なりあって色鮮やかな森の姿を作っています。本を開くと、いつのまにか深い森の世界へ。
森に吹く風や土の匂いを感じながらページをめくると、フランシスさんの言葉が、ぐっと心に迫ります。
「こんなことをして、人はゆるされるのか?ほかの生きものや植物たちといっしょに、なかよく生きていくべきじゃないのか?」
美しいイラストレーションを楽しみながら、自然と人間の存在について立ち止まって考えさせてくれる絵本です。
さて、無事に家に戻ったフランシスさんに、奥さんの声がします。
「おかえりなさい、あなた。パンは買ってきてくれた?」
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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