この絵本を読んだときに湧き上がる感情は、読む人の立場によってさまざまだと思います。
猫を飼っている人、飼っていない人。
子どもがいる人、いない人。
大人と子ども。
子どもと一口に言っても、幼児なのか、小学生なのか、思春期なのか……。その成長過程によっても、きっと異なるはず。
例えば私。
私は今、もうすぐ11歳になる愛猫を膝の上に乗せて、パソコンの前に座っています。
彼はおしっこがでなくなって、去年の夏に手術をしました。
ぺーもまた、おしっこがでなくなって手術をしました。
そして、「ぼく」と「ぺー」のように同い年ではないけれど、もうすぐ5歳になる息子は、彼が大好きです。
ふたりは同じ家に住み、一緒に生きているけれど、時間の流れは、どこかずれている。
日本人男性の平均寿命は81歳。
猫の平均寿命は15歳。
月曜の朝が来て、火曜の朝を私たちが迎えている頃、
猫は土曜の午後を過ごしているような、そんな時間感覚。
どんどん成長する「ぼく」と、いつの間にか成長を終えて年老いていく「ぺー」。
「ぼく」の世界は広がっていくのに、「ぺー」の世界は狭まっていく。
それでもふたりは同じく今を生きている。
たくさんの時間を一緒に過ごしている。
作者は『十二歳』や『しずかな日々』(共に講談社)など、児童文学からエッセイまで、幅広いジャンルの作品を手がける、椰月美智子さん。そして、イラストレーターの小川かなこさんの力強いタッチが、ぺーとぼくのかけがえのない12年を色鮮やかに描きます。
小さな命と過ごす時間を、もっともっと大事にしたくなる絵本です。
(近野明日花 絵本ナビライター)
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これは、ぼくとペーの12年間の物語。
ぼくがぼくになったときからペーはいた。ぼくが生まれた次の日に、ぼくの家にやってきた子猫のペー。同い年のペーとぼくは、一緒に大きくなっていく。ぼくはペーのことが大すきで、ペーもきっと、ぼくのことが大好き。家を守るために、大きな野良猫に立ちむかったり、ひだまりでぐるぐるとのどを鳴らしたりするペーは、とっても強い猫だった。でもあるとき、ペーは病気にかかってしまう。病気になってからすっかり元気をなくしてしまったペーと、どんどんどんどん大きく成長していくぼく。そしてぼくが12歳になったとき……。
少年の目線から、自身の成長とペットと過ごす日々、そして別れを描いた物語。人気作家、椰月美智子の初めての絵本作品。
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