たしろちさとさんの描く動物が大好きなのですが、
今回のアフリカの壮大な自然を舞台にした野生のゾウ達の姿には、
特に心を奪われてしまいます。
雨の降らない季節が続き、水の楽園オカバンゴを目指すゾウ達の群れの中に小さなゾウが一頭。お母さんに守られて、一緒に旅をしています。
ある時ゾウの群れは砂嵐におそわれ、気がつけば小さなゾウはひとりぼっちに。見つけた足跡をたどっていった先で、見たこともない大きなゾウのおじさんに出会います。
ひとりぼっちの小さなゾウを放っておくこともできず、仕方なしに一緒に旅することにした大きなゾウ。お母さんがいなくなってゾウのおじさんに頼るしかない小さなゾウ。二頭は旅を続けていくうちにやがて心が通い合っていき…。
広い広いアフリカの大地を歩く、小さなゾウと大きなゾウ二頭。色彩も景色も表情も、余計な表現は一切はぶかれ極力シンプルに描かれたこの作品。可愛らしくも頼りなさげな小さなゾウの横で、経験を重ねた大きなゾウの重厚な存在感が引き立ちます。山の様な体に無数の傷やしわのある分厚い皮膚、迫力のある牙に深みを感じる瞳。時に厳しく力強く、時に温かく優しさにあふれているその姿に、ただただ無心で見入ってしまうのです。
心温まる物語と共に、この圧倒的な大きさこそ野生ゾウの魅力であり、子どもたちに感じてもらいたいという作者のたしろさんの気迫も伝わってきます。
さて、小さなゾウは無事にお母さんと再会できたのでしょうか。
個人的には、色々な気持ちを体験しながらも「やっぱり一人がきまま」とばかりに歩きだす、地平線彼方に見える大きなゾウの小さな姿も好きな場面です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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