『金のおのと 銀のおの』と言えば、有名なイソップ物語。
木こりが湖に斧を落としてしまったところ、湖の中から神様が現れて、「お前が落としたのは金の斧か、それとも銀の斧か」と尋ねてくるというものです。
女神の姿で描かれることが多い湖の神様ですが、女神姿なのは実は日本だけなのだそう。
元のおはなしでは、ヘルメスというギリシャ神話に登場する若い男性の姿をした神様です。
しかし、きしらまゆこさんの描く『きんのおのと ぎんのおのと たくさんのおの』では、神様は、そのどちらとも違った、かわいらしいおじいちゃんの姿で登場します。
絵本も縦に開く形なので、いつもと違った読み方が新鮮。
さらに、ページには観音開きのしかけが……。
開かずに読み進めると、慣れ親しんだ『金のおのと 銀のおの』のおはなし。
でも、観音開きのしかけを開いてみると、そこには今まで誰も知らなかった、湖の中での神様の様子が表れます。
湖の中での出来事を知ってしまったら、それはもういつもの『金のおのと 銀のおの』ではありません。
湖に斧を落としてしまった木こりに呼ばれた神様。
木こりのために、斧を探しに湖の底へもぐっていきます。
湖の底には、今まで大勢の木こりたちが落としていった大量のオノがありました。
命より大事なオノなら、このどちらかに違いない!と神様が選んだのは、もちろん、金の斧と銀の斧。
神様は、木こりの正直さを試そうとしたわけではなかったんですね。
木こりは無事3本の斧を受け取り、帰っていきました。
その様子を見ていたのは、欲ばりな木こり。
正直な木こりと同じように斧を湖に落とし、神様に斧を返してほしいと頼みます。
言われた通りに斧を拾いに行く神様。
いつものおはなしなら、神様はまた金の斧と銀の斧を持っていきますが、湖の底には、もう金の斧も銀の斧もありません。
神様、どうするのでしょうか…?
正直な木こり以上に、善良で、素直で、かわいらしい神様が魅力的な絵本。
シリーズには『3びきのこぶたと 4ひきめのこぶた』や『おおきなかぶとちいさなかぶ』、『うさぎと かめと あり』があり、
こちらも魅力いっぱいなので、ぜひあわせて読んでみてくださいね。
(近野明日花 絵本ナビライター)
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