ジョン・バーニンガムと谷川俊太郎さん。
その名コンビの名前を目にするだけでも、いちファンとしては心が躍ってしまいますが、
何だか絵のタッチや雰囲気が大胆で力強い感じなのは、これがバーニンガム初期の作品だからなのだそう。
「最高作のひとつ」と言われていたまぼろしの1冊を、バーニンガム自ら改編、そして谷川さんが翻訳を手がけられて発売となりました。一体どんな内容なのでしょう。
ずっと昔から森に住んでいる、のうさぎとかばとぞう。かばとぞうは退屈するといつものうさぎをからかったりいじめたりするので、のうさぎはうんざりです。
「ながながみみのちびのひょろすけ。」「ぴくぴくみみとひくひくひげのとんま。」
なかなかくだらない悪口です。これじゃあ、のうさぎだって嫌になっちゃうよね。
そこでのうさぎは考えます。
「力自慢のかばとぞうにつなひきをさせよう!」
だけどその方法はというと、かばにもぞうにものうさぎを相手に勝負するともちかける、というもの。
のうさぎ相手なら当然負けるはずがないと、余裕で勝負にのぞんでくるかばとぞう。
この勝負の行方、どうなる…!?
アフリカに古くから伝わるという民話をもとに描かれた作品です。堂々たる体と態度を持ち合わせたかばとぞうが、小さなのうさぎに言いくるめられて奮闘する姿は何とも痛快です。最後も納得の終わり方、気持ちがスカッとしますよ。
そして、やっぱりたまらないのが自由で大胆、愛らしいバーニンガムの絵です!
ふてぶてしいような、ちょっと間の抜けたようなかばとぞうの表情、すばしっこいのうさぎの躍動感。時間を追うごとに劇的に変化していく森の様子や空の色。特に夕陽に燃えた景色は圧巻。
そんな壮大な景色をバックに、いつまでも必死でつなひきをしているかばとぞう…その滑稽さがバーニンガムの真骨頂なのかもしれませんね。
バーニンガムの世界が満喫できるこの1冊、皆さんも谷川さんの軽快な翻訳文で楽しんでくださいね。
こんな絵本がまた読めるなんて嬉しいなあ…。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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