商家に住み込んで、その手伝いをする少年「でっち」。
そんなでっちのひとりである「かめきち」は、旦那のお気に入りでした。
いつもニコニコして、いやな顔をしたことがありません。
ところがこのかめきち、物忘れがあまりにひどい!
そんなかめきちが、となり町の「平林」さんへ手紙をとどけるよういいつけられます。
「となり町まで、『ひらばやし、ひらばやし』と言いながら歩いていったら、忘れないだろう」
だんなに言われたとおり、「ひらばやし、ひらばやし」と唱えながら歩いていったかめきち。
ところが、というか、やっぱり、というか……だれにとどけるものか、すぐにかめきちは忘れてしまいました。
手紙に書いてある宛て名を見ればわかるのですが、かめきちはまだ字が読めません。
そこで、街ゆく人々に宛て名を読んでもらおうとするのですが——?
「でっち」が活躍する落語を絵本にした「桂文我のでっち絵本」シリーズ第3弾!
間が抜けていたり、忘れっぽかったり、話をさんざ引っかき回してしまうけれど、愛嬌があって憎めない!
そんな、落語に欠かせない存在である「でっち」。
ところがこのおはなしでは、「でっち」である「かめきち」以外のキャラクターたちまで、よってたかって話をひっかきまわすから、もう大変!
ふざけているんだが、知ったかぶっているんだか……
かめきちに「平林」の読み方をたずねられた人たちは、「たいらばやし」やら「ひらりん」やら、みんながみんな変な読み方を教えるんです。
そうしてかめきち、こんどこそ忘れないようにと、教えてもらったおかしな名前をぜんぶくっつけて唱えるものですから――。
「たいらばやしか、ひらりんか。いちはちじゅうのもぉくもく……(続きます)」
もはや人の名前じゃありません。呪文です。
でもそんな呪文めいたことを言っていると、かめきちったら、だんだんたのしくなってきてしまうわけです。
でも、これが実際、声に出して読んでみると、えらくたのしい!
なんども読んでみたくなるじゃありませんか。
聞いてりゃ耳がくすぐったい、いっしょに歌えば大笑い!
読み聞かせにもバツグンにおすすめの一冊です。
さあ、ではどうぞごいっしょに!
「たいらばやしか、ひらりんか。いちはちじゅうのもぉくもく……」
……はて、なんと書いて締めるつもりだったか忘れてしまいました。
(堀井拓馬 小説家)
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