スムートは、男の子のかげ。歯をみがくのも、絵を描くのもいっしょ。
男の子はあまり笑わないし、とんだりはねたり、いたずらもしない。
スムートはつまらない毎日にずっと退屈していました。
ところがある日、スムートのからだが男の子からはなれた!
やりたかったことをやるチャンス!とばかりに飛び出したスムート。
長縄跳びに飛び入りしたり、木登りしたり、メリーゴーランドにのったり。
楽しそうなスムートを見て、ほかのかげたちは思った。
「あのこに できるんなら」
「ひょっとして わたしたちも……」
さあ、いろんなかげが自由にうごきはじめましたよ。
タンポポのかげは勝手に空に舞い上がり、カエルのかげはおうじさまに。
トンボのかげは、大きくておそろしいドラゴンに。
でも……かげたちがやっていることは、もとの体が本当はやりたかったこと。
スムートがちょっと手助けをしてやると、かげたちは、もとの体と一緒に夢をかなえはじめた。
残ったのはスムートだけ……?
本書は、ふだん見向きもされない真っ黒な「かげ」が主人公。
アメリカ在住のミシェル・クエヴァス、カナダ在住のシドニー・スミスの2人による、イメージ豊かな絵本です。
自分がやりたいことをやること、心から楽しむことは、意外とむずかしいものです。
いつのまにか押し込めているかもしれない希望や情熱を、わたしたちはスムートの姿に見つけます。
絵本の中で、水彩の美しい色にとけこむように、躍動するスムートが描かれた場面には胸をゆさぶられます。
きっとこの絵本を読んだらあなたも気づくはずですよ。
「ほんとうは じぶんも、たのしいことが だいすき!」ってね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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