カエルのキダマッチ先生はひょうばんの名医。
看板もないのに、池のほとりの病院には、朝から夜まで患者がたえることはないのです。
さいごの患者が帰った真夜中、夕飯を食べそこねた先生が、ベッドでパンをもぐもぐしていると…、つばさのやぶれたコウモリが飛び込んできました。
「先生、たいへんだ。森の中で木にぶつかった」
キダマッチ先生は、血だらけのやぶけたつばさを、やぶけてない方のつばさとくらべてよく観察して、縫い合わせることにします。しかもミシンで!
麻酔代わりにお酒を飲んでうれしそうなコウモリと、まじめな顔でミシンを踏むカエルの先生の姿といったら。
繊細なタッチのうつくしい挿絵に、そこはかとないおかしさが漂って素敵です。
しもやけのキリギリスや、しっぽがこおったトカゲの奥さん…。
もうパジャマ姿なのに、次々に訪れる患者さんにキダマッチ先生はきょうも大忙し!
本来はカエルらしい食事をしていた先生ですが、最近はちょっとばかり栄養不足で元気がないみたい。
それは町へ遊びに行ったきり帰ってこない奥さんのせいかと思ったら、それだけでもなさそうで…?
児童文学者の今井恭子さんによる初めての絵本シリーズ第2弾。
副題に「先生 かんじゃを食べちゃった!?」とありますが、本当に食べちゃったのか、本当ならばどの患者なのか!? ぜひ読んでみてくださいね。
自然界や生き物の特徴をとらえた岡本順さんの絵がすばらしく、じっくり見入ってしまいます。
寒い冬の夜、居心地よさそうなキダマッチ先生の病院内でくりひろげられるやりとりと、生き物同士、食べたり食べられたりのリアルなドキドキ感が、春を待ちわびながら読むのにぴったりです。
読み聞かせにも、低・中学年の1人読みにもぜひどうぞ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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