何やら小瓶を大切そうに抱えてスキップをしている1匹のカエル。
一体何者なんでしょう?
その名はキダマッチ先生!先生と呼ばれるだけあって、アグラ山に住むさまざまな生きものたちから、それはそれは頼りにされている、山のお医者さんなんです。
さて、キダマッチ先生は今日も朝から大いそがし。
お日さまがアグラ山の向こうへかたむくころ、ようやくひと息と遅い昼ごはんを食べ始めたところに、ペタリ、ペタリという足音が。
「はあぁん、あの足音は、また野ウサギのばあさんだな」
キダマッチ先生には、足音だけで誰が来たのか分かってしまうんです。
「耳がおかしい」と訴える野ウサギのおばあさん。早速耳の中をのぞきこんでみると、なんと「ミミムシ」が大勢住みついていて・・・。この「ミミムシ」、先生はいったいどうやって退治するのでしょうか?
次に聞こえてきたのは、ベェー、ベェーというなさけない鼻声。やってきたのは、ヤギさん一家の末っ子です。足にトゲがささって痛そうな小ヤギですが、このトゲ、キダマッチ先生にはかなり大きいトゲのようで・・・。おや、トゲぬきではなくペンチを持ち出してきたようですよ。はたして無事にトゲを抜くことができるのでしょうか?
患者さんが訴える症状もユニークなら治療法もキダマッチ先生ならでは。毎回どんな風に治療するのかワクワクしてしまいます。どんな病気もケガもあっという間に治してしまうキダマッチ先生は、体は患者さんの何倍も小さいけれど、その小ささをうまく生かしているのがすごいところ。体を張った命がけの治療も、キダマッチ先生には申し訳ないけれどこのシリーズのお楽しみかもしれません。今回のお話はシリーズ3巻目となりますが、1巻目は、「先生 かんじゃにのまれる」、2巻目は、「先生 かんじゃを食べちゃった!?」と副題がついているぐらいですから、キダマッチ先生の治療がいかに危険と隣り合わせで、命懸けで患者さんを治療しているのかがうかがえますね。
そんなキダマッチ先生のお人柄はさぞ立派な方なのかと思いきや、今回のお話では、お酒に酔っぱらいながら治療したり、帰ってこない奥さんにお手紙を書き始めたり・・・。名医だけれどどこか完璧じゃないその人間性、いやカエル性?にたまらなく惹かれてしまうんです。
児童文学作家の今井恭子さんによる初めての絵本シリーズ「キダマッチ先生!」の第3弾。今井恭子さんは、今年『こんぴら狗』が課題図書(高学年の部)に選ばれたり、小学館児童出版文化賞を受賞され、今後の活躍が大きく期待される作家さんです。そして岡本順さんの描く美しい自然や事物の描写と、ユーモラスな生き物たちの姿にも魅力がいっぱい。子どもから大人まで幅広い年代の方が楽しめるお話ですが、絵本からちょっとステップアップして、読み物に挑戦してみようという時期の子どもたちに特におすすめしたいシリーズです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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