子どもは仲良しのお友だちと手をつなぐのが大好き。
大人だって、大好きな人と手をつなぐと、なんだってできそう、どこへだって行けそうな、無敵な気持ちになりませんか?
本書は、お母さんと子どもが重ねていく時間と記憶を、手を通して描く物語です。
大きなおなかをそっとなでるお母さんの手は、優しい。
この世界は素敵なところだよ。
あなたに会えるのが、とっても楽しみだよ。
きっと、そんなことを思いながら。
あなたが産まれたとき、お母さんの手はその小さな体を愛おしそうに包みこむ。
ふらふらしながら、ようやく立っちしたとき、あんよしたとき。
あなたの「初めて」を誇らしげにささえてくれたのは、お母さんの手。
暗い夜の階段をのぼるとき、怖がるあなたの小さな手を、温かな手がしっかりと握ってくれた。
スキップして走って転んで、泣きべそをかいたときには、お母さんの手があなたを抱き上げて、テキパキとよごれた手を洗ってくれた。
パンパンパン!手のひらをあわせて音を鳴らし、笑顔を見合わせた手遊び。
一緒に土をさわり、野菜をもいだ庭仕事。
並んで立ち、一緒においしいものを作りだしたキッチン。
手のひらから小鳥にえさをあげた、雪の日。
当たり前のように手をつないで、並んで歩いていた親子だけれど、子どもの成長につれて、いつしかお母さんは小さな背中を見送ることが多くなっていく――。
温かくて柔らかい本書の絵を眺めていると、自分の中に確かにある愛された記憶と感触に、心が満たされるような気がします。
自分がもらってきたたくさんの愛を、今度は子どもにバトンタッチしていく――。人間がずっとつづけてきたことの素晴らしさと尊さ、そしてかぎりない愛が、本書からきらきらと溢れ出ています。
最後のページを開いてみてください。
献辞の下にある、翻訳者の落合恵子さんの温かく真摯なメッセージが胸をうちます。
大切な人と一緒に読めば、忘れがたい思い出のひとつになること間違いなしの一冊です。
(絵本ナビ編集部)
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