表紙の可愛い絵から、ほのぼの絵本かと思って読みはじめたら、いい意味で期待を裏切られます。
「もうすぐ夏休み。じゃあなと手をふり、友だちとわかれて家に帰ると、ブタがいた。」
驚きながらもやっぱり……という目で見つめる少年の絵。
こんなシュールな出だしからはじまる物語は、大人はドキッ、子どもはニヤッと笑っちゃう展開なのです。
ママの洋服を着て、二本足で立っている奇妙なブタは、やはりママにちがいありません。
必死で否定するけれど、どうやらぼくの日記を読んだようです。
ぼくは図書館で読んだ本に書いてあったとおりに魔法をかけたんです。
日記を勝手に読んだ人はブタになるように、って。
ママが口を開いても、ぶぅぶぅ言うばかりで、なにを言っているのかわからない。調理実習に持っていくたまごを買いに行かなくちゃいけないのに、カギもかけられないし、ドアもしめられない。いつもはお母さんのあとについていくぼくが、お母さんをつれて歩いている。
でも、時間がたつにつれ、動物らしさを増していくママの行動に、ぼくはだんだん不安になっていく。ママが本当にブタのままになってしまうような気がして……。
誰にも言いたくない気持ちを日記に書いていたぼく。
息子を信じていながらも、なにか困っていることがないか心配だったママ。
大人はなぜか、大人の言うことのほうが正しいと思っていて、子どもの言うことを真剣に聞いてはくれない。
そんな子どもの気持ちをきっちり形にする、こんなユニークな魔法があるだなんて!
自分だけの「正義」を主張するのではなく、お互いの気持ちを尊重し、歩み寄れたとき、親子は一緒に成長していくのかもしれません。
(絵本ナビ編集部)
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