アイルランド生まれの絵本作家、独特のあざやかな色合いが印象的な、クリス・ホートンの絵本です。
海のそばの、岩の窪みに暮らしているのは、大きなカニカニと小さなカニカニ。
ページをめくると、見開きいっぱいにそびえたつような、黒々とした大きな岩が描かれます。
小さなカニカニは、ある日、窪みから岩をこえて、はじめて大きな海へ……。
といってもそう簡単には行きません。
チョコチョコッと岩をこえ、チャポチャポッと潮だまりをぬけ、ねばねばっとすべりやすい海藻をこえ……ついに海!
大きな波頭が立つ海を前に、「はいらないほうがいいかもね」という小さなカニカニ。
そこへ大波が来て……!?
意気揚々とどこまでもいける!と進んできたものの、荒々しい海に「にがてかも」「もうかえったほうがいいかも」と慎重になるカニカニ。
一歩ふみだしては、手ごたえを感じ、大波をかぶっては、ひきかえしたくなったり。
絵本ならではの盛り上がりの強弱、ページ展開、おはなしのリズムが秀逸です。
とうとう大きな海に入り込んだあとの世界を、ぜひ体験してください!
大判絵本ならではの迫力、すばらしい美しさをあじわえますよ。
「思うに……かもね」ともったいぶったカニカニに、にやっとしたくなっちゃう。
カニカニと一緒に海へふみこんだ、読者の私たちも、とっても達成感をあじわえる絵本です。
だからきっと……読んでみたらいいかもね!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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