現代を代表する絵描きたちが、生き生きと絵を描く「世界のむかしばなし絵本」シリーズ。
ブルガリアの『金の鳥』(絵:さかたきよこ)や、スペイン・カタルーニャ地方の『まめつぶこぞう パトゥフェ』(絵:ささめやゆき)など見ごたえのある作品の数々が誕生しています。
さて、今回スズキコージさんが迫力ある絵を描いているのは、ジョージアの昔話。
ジョージアってどこでしょう?
南はトルコ、北はロシア、西は黒海に挟まれた国で、日本では2015年まで「グルジア」と呼ばれていたそう。
大国の間の山岳地帯、古い歴史とうつくしい自然、人々に陽気さがあるというジョージアの昔話とはどんなものでしょうか。
表紙に大きく描かれた、オニのような大男はいったい……?
おはなしは、貧しい三兄弟が仕事を探しに行くことからはじまります。
中でも末っ子のチンチラカは、知恵があるという評判で、王さまに雇われますが、魔の山に住む大男の宝物を盗んでこいと言われます。
人々に恐れられている大男の元から、いったいどうやって宝物を持ち帰ったらよいのでしょう。
チンチラカの知恵の見せどころで、おそろしい(と同時にちょっぴり抜けたところのある)大男との攻防がはじまります。
「たいへん、たいへん! チンチラカがつぼをぬすみにきたわ!」
「たいへん、たいへん! チンチラカがこんどはあたしをぬすみにきたわ!」
甲高い声で大男に言いつける、魔法の楽器のせりふも小気味よく、最後まで楽しく読めます。
寝ている大男、起きた大男、そして王さまと向かい合うチンチラカなど、くりかえされる構図のおもしろさは、さすがスズキコージさん!
片山ふえさんの文とあわせて、心地よくもダイナミックなリズム感に、虜になりそうです。
「チンチラカ」なんて、へんてこで響きの楽しげな名前が気になったら、ぜひ一度手にとってみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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