こうさぎクーが林のなかでお人形を見つけました。
誰かが忘れていったのか、切り株の上に置いてあったのです。
抱っこしてみると、おかあさんになったみたいな気分です。
うれしくなったクーは
「ちょ、ちょっだけ…かりていこうかな…」
家にお人形を連れて帰ってしまいました。
おかあさんに「そのお人形どうしたの?」と聞かれ、正直に答えられないクー。
つい「かしてもらったの」と言ってしまいます。
お友だちから直接かりたのではなく、忘れものみたいなんだけど……。
クーのこの気持ち、「わかる、わかる」とうなずきたくなる人がたくさんいるのではないでしょうか。
ちょっぴり後ろめたい。
でもこのお人形を手放したくない。
絵本の中で、クーは何度もお人形をだきしめます。
そのだきしめている姿が、なんとも切ないです。
ついにおかあさんに本当のことを言って、「すぐにかえしてきなさい!」と叱られたクー。
やだやだやだー!…と泣き出してしまいますが、切り株のそばで誰かの泣き声を聞いたクーは……?
クーの心の葛藤が、とても正直に描かれます。
宮西達也さんならではの、明快で、ほろりとする絵本。
読みながら、クーのことを応援したくなります。
クー、お人形の代わりに、新しいお友だちができるといいね!
きっとできるよ、と思わず声をかけたくなる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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