人気シリーズ「たまごにいちゃん」第17作目は、りっぱな大人になったたまごにいちゃんとたまごねえちゃんが出会って、結婚して、子どもが産まれて……。
その子どもたちは、やっぱり親に似てしまったみたい、というお話です。
たまごの殻の中身はもう大きなおにいちゃんなのに、たまごから出たくない、たまごにいちゃん。
同じく大きなおねえちゃんなのに、たまごの中の、たまごねえちゃん。
シリーズの中でそんな2人は、ちょっとずつ殻を外していきました。
あまえんぼうだったたまごにいちゃんも、わがままだったたまごねえちゃんも、りっぱな大人になったとき。
ふたりの子どもが産まれます。
その子たちは……
「やっぱりたまごのままでした。
親子はどうしたって似てしまうものです。」
この一文、ドキッとしたパパとママはいませんか?
元たまごにいちゃんとたまごねえちゃんだった、おとうさんとおかあさんは、子どもたちの気持ちがよくわかります。
だから「はやく殻をわって、たまごからでてきなさい」なんて言わないんです。素敵ですね。
(見習わなきゃ……)
それどころか、殻から出たときの話を聞きたがる子どもたちに、包み隠さず、かっこわるくてわがままだった自分たちの話をします。
おとうさんはうっかりまちがって割れちゃったし、おかあさんは殻から出てもわがままだったみたい。
でも、ふたりの子は、おとうさんのおかあさんの話を聞いて思うんです。
「ぼく、たまごはきにいってるけど、いつかわれるなら、それもいいかな〜っておもった」ってね。
まだまだたまごでいたい、という子どもの気持ちを大事にするおとうさんとおかあさん。
もとい、元たまごにいちゃんと元たまごねえちゃんの姿に、心があたたかくなります。
この絵本を読んでもらった子どもたちは、きっと「このままでいいんだ」「でも、いつかきっとたまごでなくなるときがくるんだ」と感じるに違いありません。
そしてふたりの子のように「そのときが楽しみだね〜」って思えたら、言うことないですよね。
子どもの成長、それは子どもは子どもなりに、親は親なりに受け止めていく素敵なつみかさねの時間です。
あわてず、あじわっていきたいなあ……。
そんな思いにさせられる一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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