毎月、最初の日曜日。マイロはおねえちゃんと二人で地下鉄に乗って出かけます。マイロは不安と緊張でいっぱい、同時にわくわくする気持ちも抱えながら、スケッチブックを広げます。まわりにいる人の生活を想像して絵を描くと、少し気が紛れるのです。
隣にすわったひげの濃いおじさんは、古いアパートに帰るとお腹をすかせたねこたちが待っているだろう。髪の毛を真ん中でピシッと分け、ジャケットを着た男の子は、きっとお城に住んでいて、メイドが迎えてくれるのだろう。ウエディングドレスを着たあの女の人は……。
やがてマイロはスケッチブックを閉じ、窓に映る自分の姿を見て思うのです。
「ぼくの かおを みて、ひとは どんなことを そうぞうするのだろう?」
きっとその想像は、自分が思っているものと違うかもしれない。人は見かけだけではわからないのだと、マイロは気づきます。電車が目的の駅に着くと、同じく緊張しているおねえちゃんとある場所へ向かいます。
既刊『おばあちゃんとバスにのって』の作家・画家が再びペアを組んだこの作品。本文には詳しく描かれていないけれど、マイロとおねえちゃんが訪れたところは刑務所。思いもよらない展開やその心境は、想像を超えたところにあるかもしれません。けれど、どんな気持ちでいる時にでも、世界をしっかりと受け止め、大事なことを見逃さないマイロの姿に、私たち読者は心を打たれます。最後にマイロが見せてくれた、切実な想いを込めたその絵は……?
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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毎月最初の日曜日、マイロはお姉ちゃんと地下鉄に乗って出かけます。いつも期待と不安で緊張してしまうので、気を紛らわすために、まわりの人の見た目からその人の生活を想像して、スケッチブックに絵を描きます。でも、その想像は正しいのかな?
既刊『おばあちゃんとバスにのって』がアメリカではコールデコット賞オナー賞とニューベリー賞を獲得、日本では産経児童出版文化賞翻訳作品賞に輝いた作家、画家ペアによる第3弾です。原書「Milo Imagines the World」は発売後すぐにニューヨクタイムズベストセラーリストに登場。外見で人を判断することはできないことをテーマにした絵本であり、後半の思いがけない展開に、大人も子どももきっと心を動かされるでしょう。
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