日照りが続き大かんばつに襲われようとしている村を、体を張って見事に救ったかえる。
大恩人であるかえるは、村人にとってヒーローだったのか。
・・・物語は、簡単にハッピーエンドにはならないようです。
かえるがその村にやってきたのは一年前。
長い長い旅を終えて、村はずれにある沼地に着いたのです。
その静けさと風景の美しさがすっかり気に入っていたかえる。
ところが、村人たちには歓迎されていない様子。
「あのよそもの。ぬるぬるしていて、どうも気持ち悪い」
「さっさとどこかへいってくれないかな」
そこに届いた父からの手紙により、村人たちよりも早くこの村の危機を知るかえる。
ここでかえるは何を思うのか。
「ざまあみろだ!」
受け入れてくれなかった村人たちへの怒りを表すのかもしれない。
「もし、おれの雨乞いの歌で、日照りから救うことができたなら・・・」
全く違う考えが生まれてくるのかもしれない。
もし自分が同じ立場だったなら。
もし自分が村人の立場だったなら。
答えは一つではないのでしょう。
そして、誰かが正解を教えてくれるわけでもないのでしょう。
かえるの表情からは、本当の感情をなかなか読み解くことのできないこの絵本。
いつもは底抜けに明るく笑える話を得意とする絵本作家サトシンさんが投げかけてきたテーマとは何なのか。
難しいようだけど、子どもたちにはきっと考える力があるにちがいない。
作者のそんな想いも見え隠れするようです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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