ちよちゃんは、一人でばあちゃんのうちに出かけます。
駅に着くと、ちよちゃんを待っていたのは、なんとワニでした。
「ばあちゃんのおつかい」というワニと一緒に、ばあちゃんの家へ向かいます。道はどんどん恐ろしい雰囲気になっていき、怖いものがたくさん現れます。へびやおばけにどろぼう・・・。
だけど、大丈夫。大きな体に大きな大きな口。ワニさんにはどんなものもかないません。ワニさんは、ちっともしゃべりませんが、ちよちゃんには優しいみたい。
ときおり目をギロッと動かすだけの無口なワニさんと、一方的におしゃべりを続けるちよちゃん。
飴をぽいっとあげたり、おんぶしてもらったり、かみ合わないようで通じ合っている二人の姿にクスッと笑っているうち、いつのまにかこの摩訶不思議な世界にどっぷり入り込んでしまいます。
ちよちゃんとワニさんの道中を通して感じる不思議な感覚を、前から知っていた気がするのです。出てくるおばけたちも、怖いのに、どこか懐かしい。子どもの頃、おばあちゃんの部屋の古い置物や人形を眺めて、独特の空気や匂いにドキドキした感覚を呼び起こされるような。
物語の最後に、ちよちゃんのばあちゃんの部屋でも、いろんなものに出会えます。じっくり眺めてみてくださいね。そしてワニさんはいったい何者なのでしょう、こちらもお楽しみです!
長編の物語作家・歌人としても活躍する陣崎草子さんの、初の単行本絵本。ぎっしり描き込まれた草花や生きものたちもみどころです。
自然あふれるノスタルジックな風景と、紅葉の森、祭り。秋に読みたい、ちょっと奇妙で美しい絵本です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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