ドアの向こうから、なんだか暗い顔をしてこちらを見ている青年。彼がウォッシュバーンさん?家から出ない理由が13もあるの?なんて可哀そうでうしろ向きなタイトルなのでしょう……と言いたいところなのですが、なぜだかそんな気が全然しません。お話が始まる前から「なにかが起こる」期待をしてしまうのです。
ともかく、ウォッシュバーンさんはおうちから一歩も外に出ません。
彼は言うのです。
「だって、外に出たらドアにはさまれるかも…しれないじゃない。」
カラスにつつかれるかもしれないし、柿の実が落ちてくるかもしれないし。他にも理由が次々と。あらあら、とんでもなく心配性で慎重な性格なのでしょうか。いや、どうもどうやらそれだけじゃない様子。
「だって、外に出たらももたろうがやってきて」
……何を言い出したかと思ったら!
後半の展開に驚きあきれながらも、込み上げてくるのは愉快な笑い。いるいる、こんな人。いや、ウォッシュバーンさんはむしろ私!? だって、いいじゃない。こんな思い込みでも結果的には一歩前に踏み出しているんだから。気が付けば、なぜか彼の弁護をしちゃっているのは作者の思うつぼ?
中川ひろたかさんと高畠那生さんのコンビで生まれたこの絵本。シュールなようであたたかく、皮肉っぽいようで意外と前向き。そんな理屈はさておいて、声に出して読めば必ず笑っちゃう、読み聞かせにもぴったりな絵本ですよ!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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