雨の日になると、気持ちがしずみ、なんにもやる気がしなくなる。
部屋に閉じこもって、太陽がまた顔を出すまでふとんにもぐりこんでしまう。
アデルは雨の日が苦手。
普段のアデルは、明るく輝き、笑顔の似合う愛らしい女性です。
海辺の村でカフェを出し、アデルが大好きなお客さんたちが集まってきます。
「ばらと、ひなぎく、チューリップ。」
週2回、八百屋のリュカが持ってきてくれた花で、花束をつくってお店のテーブルを飾ります。
トレードマークの「みずたまエプロン」をしゃんとしめて、髪にはバラのつぼみをさして。
なんて魅力的な女性なのでしょう。
この辺りに住む人たちにとって、小さな明かりがいつも灯っているカフェは、もうひとつの「家」。そして、そんなみんなにとってアデルは太陽そのものだったのです。リュカにとってもそう。
そんなアデルがただ一つ苦手なもの。
……それが、雨の日だったのです。
だけど、ある日。カフェを店じまいにした後に、小さな出来事が起こります。
あるものが置かれていたのです。
いったい誰が? なんのため?
アデルの素敵な物語は進んでいきます。
バラ色に輝くワンピース、すっとした立ち姿、キュートなエプロンとその笑顔。
誰もが憧れてしまう女性、アデル。
見ているだけも幸せになってしまうような彼女にも、繊細な一面があるものです。
そんな曇った心を動かしてくれたのは、誰だったのでしょう。
少し大人っぽいかな、と思っても。
子どもたちは、このお話にどんどん惹きこまれていってしまうはず。
だって「心が晴れる瞬間」なら、大人にならなくたってわかりますものね!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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