うさぎは本が好きでした。
図書館の外でおこなわれる朗読会をこっそり聞いては、いろいろな物語に思いをはせていたのです。
ところが夏が終わると、朗読会は図書館のなかでおこなわれるようになってしまいました。
大好きな物語が聞けないなんて、そんなのあんまりだ! うさぎはいてもたってもいられず、夜の図書館に忍びこみました。
そこにはたくさんの本、本、本——うさぎは大よろこび!
毎晩図書館にかよっては、たくさんの本を持ち帰ってよみふけっています。
やがて、うさぎの図書館通いはほかのどうぶつたちも知るところとなり、みんなで図書館へおもむくこととなるのですが――。
本を読むことは、おいしいものを食べることに似ていると思うのです。
ほっこり、うっとり、心がみたされて、ふぅ、と、その幸福に息をつくような――。
おなかは、ふくれませんけどね。
うさぎがたくさんの本を持って、にこにこと帰路を急ぐ姿。
お茶とおやつを用意して、森のどうぶつたちが夢中で本を読みふける光景。
そんなふうにみんなが本を楽しでいる姿を見ると、いっしょになって何冊も何冊も楽しい本を読んだかのように感じられて、とてもみたされた心持ちになるのです。
子どもがいかにもおいしそうにモリモリとものを食べるようすを見ると、自分もそれを食べているかのように、みちたりた気持ちになることってありますよね?
まさしく、あの感じ!
本を読んだときの、あのなんともいえない、みたされた気持ちや、次に読む本を選んでいるときのあのワクワクした気持ちが、みずみずしく胸によみがえる一冊です。
イラストのかわいさもこの作品の大切なみどころ!
それぞれが個性的で愛らしいどうぶつたち。
森に咲く花々や、うさぎの家の家具、図書館を彩るカラフルな本たちなど。
細部から全体に至るまで、胸おどるかわいらしいデザインがほどこされた、宝箱のような作品です。
(堀井拓馬 小説家)
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