ふたりの子どもたちが向きあっています。
「『あっちいけ』とか『きらいだー』とかいったら、どうなる?」
……よく見ると、ふたりのあいだにギザギザの穴があいています。
次のページでは……「『いっしょにあそぼう』とか『こっちへおいでよ』とかいったら、どうなる?」
楽しそうな子どもたちの間に、赤いギザギザの小さな木が、幹となってすっくと立っています。
「ふん!」「ぷん!」と背中を向けたら?
「あのさ」とか「ねえねえ」と声をかけたら?
ページをめくるたび、左の場面では縦長の穴が、右の場面では同じ形の木の幹が浮き上がる、しかけ絵本です。
『おなじそらのしたで』(ひさかたチャイルド)、『いのちの木』(ポプラ社)、『かべのむこうになにがある?』(BL出版)など、優しいまなざしで哲学的な絵本を描く、ブリッタ・テッケントラップ。
深みのある色づかい、自然や生きものをとらえた美しい造形には、心をしんと撫でつける優しさとひそかな華やかさがあります。
小さな亀裂から大きくなっていく溝と、一方で、どんどん大きく育っていく一本の木。
ちょっとした言葉に心を揺らしながら、子どもたちが心で育てるものの大きさを、1本の木に象徴させるように描いた作品です。
「こころのなかで もっと もっと おおきく やさしいきもちが そだちますように」
絵本ならではの、あざやかに展開する世界をあじわってくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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