同じ五・七・五なのに、川柳と俳句は大ちがいだ。俳句が花鳥諷詠なら、川柳は人間諷詠である。ユーモア、ウィット(機智)、エスプリ(才気)、サタイア(風刺)などを基調とする短詩、といえる。
朝日新聞紙上で「朝日川柳」をたった一人で担当する西木空人氏は元天声人語の名筆、栗田亘その人である。
選ばれた川柳は粒ぞろいである。「叱られて寝る子が閉めてゆく襖」、「子が出来て川の字なりに寝る夫婦」、
「良心の唇青しカンニング」とほほえましい句があれば、「貧しさもあまりの果は笑ひ合ひ」と貧乏句がある。
かと思うと「逃げて行く家鴨のお尻嬉しそう」「旧友の顔の中なる幼な顔」と笑いを呼ぶ句もある。
激しい反戦の句もある。「手と足をもいだ丸太にしてかえし」「国境を知らぬ草の実こぼれ合ひ」。
どこのページを開いても、うふふと笑い、、涙ぐみ、身につまされる。
でも全体、温かい句や子どもや生き物の句が目立つのは、編著者の人柄だろう。
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