大木実さんのよく知られている詩は、「前へ」です。やさしい綴り方のような詩です。
少年の日読んだ「家なき子」の物語の結びは、こういう言葉で終っている。
―前へ。
僕はこの言葉が好きだ。
(中略)
辛いこと、厭なこと、哀しい ことに、出会うたび、
僕は弱い自分を励ます。
―前へ。
タイトルになった「きみが好きだよ」は「妻」という詩から採った。
30年連れ添った妻が台所で煮物をしている。髪に白いものがみえる妻。この妻を詩人は好きだ。
口にだして言ったらおかしいだろうか
―きみが好きだよ
青年のように
青年の日のように
この一行で編者はこの詞華集を編む気持ちになった。
●収録詩●
妻・月夜・朝・巣・稚な子のように・冬夜独居・紙風船・冬・初雪・帰途・前夜・日本のさくら・手・鶴岡八幡宮
朝・米をとぐ音・吊橋・母の手・屋根・吾子誕生・金色の時・あかご・王様の昼寝・爪・吾子一年生・秘密
三輪車・おさなご・父と子・日曜日・未来・初節句・未明・夜半の目ざめに・モーツアルト・夜の貨物列車
朝の幸福・かなしみ・曇った日の夕方・味噌汁や握り飯など・秋夜・猿蟹合戦・押入・ぼくの本・朧夜・辻野先生
ひとりの先生と一冊の詩集・自伝・前へ(全49編収録)
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