フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ9巻は、今江祥智×長谷川義史のコンビがお届けする『ヒコーキざむらい』。
誰にだって、とびきり好きなものもあれば、苦手なものもあります。
でもできれば、勇気を出して苦手なものを乗り越えてほしい。
その先には、きっと今まで見たこともない新しい世界が待っているから……。
自分の大切な人、愛しい人にほど、そう願うものです。
この絵本の登場人物は、3人。
飛行機が苦手なミチと、飛行機で旅するのが大好きなおばあちゃん、そして、飛行機に乗ったことのある数少ないお侍さんである、ミチのひいおじいちゃん。
かつてひいおじいちゃんが乗った飛行機は、3メートルしか上がりませんでした。
でも、「結果的に3メートル」だっただけ。
「飛行機に乗るか」と聞かれてイエスと答えたのは、ひいおじいちゃんだけ、他のお侍さんたちは、怖気づいて誰も乗ると言えなかったのです。
そして、おばあちゃんは初めて飛行機に乗るとき、「この飛行機も3メートルくらいだ」と思い込むことで、怖さを克服したそうです。
おばあちゃんからこの話を聞いたミチは、苦手な飛行機を克服できるでしょうか?
3メートルの勇気。
どんなに怖いもの、苦手なもの、もしかしたらほんの少し勇気を出せば、乗り越えられるのかもしれません。
そして乗り越えたその先には、この絵本で長谷川義史さんが描いたのびやかな大空のような見事な景色が、広がっていることでしょう。
「三メートルくらい ほんのひとっとびさ」
(洪愛舜 編集者・ライター)
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「ほんのちょっと」と思ってみたら、本当に飛べたんだよ、というおばあちゃん。
日本人で初めてヒコーキに乗る体験をしたひいおじいちゃんに憧れて、
自分もヒコーキに乗ったおばあちゃんは、孫のミチも誘うのだけれども、
ミチはどうしても怖くてだめ。そんなミチにおばあちゃんはこっそり話したかったのです。
ひいおじいちゃんも、おばあちゃんも「飛んだ」人。
それは、空を飛ぶことであり、いまの自分を超えることであるのかもしれない。
跳び箱を飛んでいるミチの絵に、すっと晴れやかな気持ちになります。
長谷川義史さんの描くのびやかな空が実に素晴らしく、
心から願えば、いつかぽんと自分を超えられる、そんな希望を感じさせてくれる絵本です。
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