母さん、きょうは、ざんぎょうだ。
ゆうはんは、父さんが、たまごチャーハンつくるからね。
ついでにたまごをかってきておくれ。
おつかいをたのまれたシャオユイ(「小魚」という名の女の子)は、猫のあとについて、屋根の影の上をあるいたり、青いビー玉をひろってのぞいたり。
木の下にメガネをみつけて、かけてみたら、母さんのよう。
そのまま路地裏の雑貨屋にとうちゃくすると
「ハロー、ごしゅじん。たまごちょうだい。
ゆうはんにたまごチャーハンつくって、夫と子どもにたべさせたいの。」
と、なりきります。
雑貨屋のご主人の対応が素敵です。
昔はどこの路地裏でも、こんなあたたかいやりとりが、そこかしこで見られたのかもしれません。
壁色というのでしょうか。くすんだ濃い黄土色が全体の基調になっていて、セピアのように懐かしい感じをかもし出しています。人物の表情も素敵。
この絵本を描いた、台湾の作家、チェン・ジーユエンは1975年生まれ。97年より台北市在住。
訳者の中由美子さんは、中国・台湾・香港の児童文学を紹介している方。
日本でチェン・ジーユエンさんの絵本発刊はこれが初めてだそうですが、他の作品も読んでみたい!
母さんになりきる、かわいいシャオユイ(小魚)に共感できるのは、もしかしたら、6〜7歳くらいからかもしれません。
小学校1年生で学ぶくらいの簡単な漢字が少し使われていますが、ルビがふられています。
色合いといい、風合いといい、全体的にしみじみとして滋味が感じられます。
子どもにも大人にも読んでほしい絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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