何なんですか、このお話・・・!!
そう言いながらも驚きの展開の数々にすっかり夢中、途中でやめられなくなるのがこの宮沢賢治の快作『洞熊学校を卒業した三人』。
洞熊学校に同時に入学したのは、赤い手長の蜘蛛と、銀いろのなめくじと、顔を洗ったことのない狸。
洞熊先生に習ったことと言えば、一番になること。その方法とは競争、だまし合い…どうなってるの、この学校!?
一方その頃、蒼い目をした蜂たちは一つ一つの小さな桃色の花から密や香料をもらったり、花粉を他の花のところに運んだり、大忙しの春を過ごすのです。
さて、物語はそれぞれ三人が卒業した後のことを語ります。
洞熊学校で学んだ精神を忘れずに、それ、一番になろうと考えます。
蜘蛛はどうしたか。
容赦なく獲物を捕まえながら、どんどん大きくなっていくが…?
銀色のなめくじはどうしたか。
知恵を使って驚くほど大きくなり、名誉まで手にいれようとするが…?
最後に顔を洗わない狸は?
それぞれに必死で一生懸命。醜いようで、でも何だか可笑しい。その様子は風刺とユーモアがたっぷりで、読んでいる方が驚く事もしばしば。衝撃的な場面では笑ってしまい、エピソードの始まりと終わりでほのぼのさせられる大島妙子さんの絵がなんといってもすごい。まるで大島さんが描いたお話のようでもあり。
この寓話から何を受取るのか。眼の蒼い蜂たちの存在は何を意味するのか。大人になれば、思うところが多々あるかもしれない。今の仕事や生活の現実と照らし合わせてしまうかもしれない。
でも子どもたちにはまず、単純に物語の面白さを楽しんでもらいたいです。そこで何かザワザワっと引っかかったものがあったとすれば、また何年か後にきっと読み返してしまうのでしょうしね。楽しみです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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