この春、『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞した江國香織さん。いまもっとも脂ののった作家のひとりですね。
江國さんが最初の本『こうばしい日々』を出されたとき、私はなりたての編集者でしたが、行く先々でお名前を耳にしていたことをよく覚えています。『こうばしい日々』をはじめ『ぼくの小鳥ちゃん』などでも児童文学の賞をつぎつぎとられていって、あるとき、紫式部文学賞授賞式の写真を雑誌でみつけました。その受賞作『きらきらひかる』に始まる小説世界でのその後のご活躍はご存知のとおり。『落下する夕方』も『神様のボート』も近刊の『スイートリトルライズ』も・・・何度読んでもいいのです。本というものがあってよかったなとしみじみ思うのです。
江國さんは、小説のみならず、エッセイ集も、詩集も、絵本も、絵本に関する本も、絵本の翻訳もたくさん出されています。言葉のもつ力、言葉のつくりだす世界がこんなに豊かで素敵なものなのだということを感じさせてくれるのですね。
今回の『ジャミパン』は、短編小説集の中の一つを絵本の形としてつくらせていただきました。
短編集の中の1篇として読んでいるときとはまたちがった、一つの作品としての空気、世界を、言葉と絵の世界で丁寧につくり出して味わいたいと思いました。
小説として完結している作品をあえて絵本という形にしたのですから、絵描きさんにとっては
かなりシビアなことです。そこは、さすが宇野亜喜良さんなのです。江國さんの最初の絵本も宇野さんでした。(宇野さんのコメント読んでくださいね→特集へ)
『ジャミパン』に描かれている、少女がみつめる大人への視線はかつての自分の中にもたしかにあったし、だからぞくぞくと引き込まれてゆきます。ふたりとも、何にも媚びていないのがよいし、自分が自分であることがやっぱりかっこいいのだと思うのです。お読みになったら、きっと、魅力的な大人になりたい、という気持ちにさせられます。
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