「流れ星だ」
テオは目をとじ、両手のこぶしをぎゅっとにぎり、舌をかみ…。お父さんがいつも言っていたのです、願いごとをするときは、心臓のありったけで願わなくちゃいけないって。テオは心臓のすみからすみまで、全部をこめて、願いごとをします。
「ひとりぼっちじゃなく、いられますように」
今夜は、クリスマスイブです。なのに、テオのお父さんとお母さんは、いつものように仕事で留守。ベビーシッターは、テオをほったらかして居眠りをしているのです。
すると、テオのうしろで、クリスマスツリーが、さわさわと音を立て…古ぼけたツリーの飾りたち(天使、ブリキの兵隊、コマドリ、木馬)が動きだします! テオは、とりあえずひとりじゃない。でも、彼らはそれぞれ自分たちの願いがあるようで、それを叶えるためにみんなで外へ出かけ……。こうして、テオと飾りたちの一夜限りの冒険がはじまります。
みんなが本当に大切にしているものを次々に見つけていくなか、テオの心からの願いは叶うのでしょうか。
読み応えのあるストーリーだけれど、愛らしく、カラフルで華やかなイラストが全ての場面を彩りながら進んでいくので、ちっとも長さは感じません。そして、少し切なさを感じるテオの置かれた環境だって、優しく包み込んでくれているようです。そして、最後。感動のクライマックスの場面へと連れていってくれます。テオ、お父さん、お母さん、どの立場の視点から読んだとしても、少し鼻の奥がツンとくるような奇跡を起こしたのが、まさかあの子だったとは!
表紙はまるでツリーの飾りのようにキラキラとひかり、表紙カバーをはずせば更に驚きの装飾が入っている素敵な装丁は、もちろんクリスマスプレゼントにぴったりな一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む