「ぼくが きのうから よんでたんだよ!」
「きょうは わたし!」
おやおや、大きな声が聞こえてきたのは「すくすくようちえん」から。
しゅんくんといくちゃんが、一冊の絵本を持ったまま、どちらも離そうとしません。
どうやら、二人とも同時にこの絵本を読みたくなってしまったようです。
一歩もゆずらないしゅんくんといくちゃん、とうとうケンカになってしまいました。
ところが、絵本が破けそうになったので、しゅんくんが慌てて手を離して……。
ケンカをして、物が壊れてしまうのはよくないけれど、なんだか二人の強い気持ちも伝わってきますよね。どうしても今、この絵本が読みたい。それだけはどうしてもゆずることができない。そんな、頑なな気持ちになってしまった二人を見ていて、ゆきこ先生はどうしたのでしょう?
「みんなで一緒に読みましょう」
そういって丸くおさめるのは簡単だけれど、ゆきこ先生はある方法を使って見事に二人の心を溶かします。だって、自分から相手の思いを受け取る気持ちにならないと「一緒に」なんて思えませんよね。
くすのきしげのりさんの「すこやかな心をはぐくむ絵本」シリーズ6冊目は、「わかちあう心」をテーマに武田美穂さんの親しみやすいイラストで描き出します。子どもたちのくるくる変わる表情から、その小さな心の動きがストレートに伝わってくる一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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