ボクは小さいとき「どうぶつほごセンター」の「じょうとかい」で、あいつに会った。あいつがボクを抱きあげたとき、思いっきりしっぽをふって甘えた。ボクがあいつを選んだんだ。だって、なんだか頼りなさそうだったから。こいつはボクが面倒みてやらなきゃと思ってついてきたんだ……。
ボク、つまり犬の「スウ」の目線から、あいつ、飼い主の男の子「ゆうま」を描いた絵本。ボクがペロペロなめて起こしてやらなきゃ、なかなか起きられないし、しょっちゅうご飯を残すから代わりに食べてやるし。とにかく手のかかるあいつ。それなのに、あるときボクがいくら探しても家の中にいなくて……!?
人気絵本作家のきむらゆういちさんが太い線で描く、犬の表情が豊かです。ニコニコ顔、してやったりの顔、そして、あいつを心配しておろおろする顔も。
いつの間にか成長したあいつに気づくとき、ボク(犬)はどうするのでしょう。でも、きっとボクにとっては、あいつは、いつまでも「そばについていてやらなきゃ」の存在。こんな味方がいるっていいなあと思います。
親でも兄弟でもない「あいつ」を描いた絵本。動物好きな子、すでに生き物を飼っている子やいつか飼いたい子にもぜひどうぞ。ふたりの関係性を微笑ましく思うと同時に、「こいつから自分ってどんなふうに見えてるのかな」……と(わが家にはメダカしかいませんが)考えちゃいますね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
続きを読む