宮沢賢治作品を、武田美穂さんが低学年向けにわかりやすい絵本にしている「えほん宮沢賢治ワールド」シリーズ。4作目の本書は、賢治の代表作「銀河鉄道の夜」から作られた絵本です。
船乗りのお父さんが帰ってこなくなり、病弱なお母さんを支えながら仕事やうちのことで忙しくて、友達のカムパネルラともゆっくり話せないジョバンニ。昼間、学校では疲れてぼうっとしてしまいます。先生に当てられて答えられないジョバンニと、それをちょっと意地悪そうに見ているザネリ、性格の良さそうなカムパネルラが、親しみやすい絵柄でぐっと身近に感じられます。
せっかくの銀河のおまつりの夜も、ジョバンニはひとりぼっち。晴れ着を着てはしゃぐ子の輪に入れず、丘の上で星を見ていました。すると「ぎんがステーション ぎんがステーション」とどこからか声がして、いきなりぱあっと目の前が明るくなったと思うと……ジョバンニは汽車の中にいたのです。カムパネルラも乗っていて、ふたりで宝石でできたような河原におりたり、鳥をつかまえる男に出会ったりしながら、旅を続けます……。
汽車の中で手を握り「ぼくたちずっとどこまでもいっしょにいようね」というジョバンニ。「ああ、きっといくよ」というカムパネルラ。ジョバンニの横顔、後ろ姿に、子どもたちは想像をふくらませることでしょう。
「宮沢賢治の作品の魅力を、自分なりの表現で、低学年の子どもたちに伝えたい」という思いで武田美穂さんが取り組むこのシリーズ。読者にはいつか原作を読んで物語を丸ごと味わってもらいたい、そのための橋渡しに、この本がなってくれたらと願っているそうです。賢治作品のきらきらした魅力や、不思議さあふれる時間と空間の推移が、たしかに伝わってくる一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
銀河のおまつりの夜。ひとり丘の上で星をみていたジョバンニは、気がつくと汽車の中にいました。なかよしのカムパネルラが乗っています。二人はとちゅうで、宝石のような河原に立ちよったり、鳥をつかまえる男に出会ったりしながら、ふしぎな旅をつづけます。宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』が親しみやすい絵本になりました。
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