
「真っ赤なお鼻のトナカイさんは……♪」でおなじみのクリスマスソング「赤鼻のトナカイ」。毎年クリスマスが近づくとよく耳にする名曲に、実は元になった物語があることをご存知でしょうか。
その物語が生まれたのは、1939年のアメリカ。
“クリスマスのまえの日のこと。 森で楽しそうに遊ぶトナカイたちの中で、ルドルフだけは仲間はずれでひとりぼっち。 なぜなら、他のトナカイの鼻は小さくて茶色だというのに、ルドルフの鼻だけ赤くて大きくて光っているからです。みんなにからかわれて涙を流しながらも、ルドルフはサンタさんからのプレゼントを楽しみに眠りにつきました。 一方その頃、サンタさんは深い霧に悩まされていました。外は真っ暗でどこへ進めば良いのか分かりません。子どもたちへのプレゼント配りは遅れるばかり。そんな中、サンタさんがある部屋に入ると、そこだけとっても明るくて……。 そこでサンタさんがひらめいた「さいこうのおもいつき」とは!?”
この物語の作者ロバート・L・メイは、老舗デパート「モンゴメリー・ワード」で働くコピーライターでした。無料のクリスマスプレゼントとしてつくられたこの物語には、当時病気の妻を支えながら幼い娘を育てていたメイ自身の想いが強く込められています。「どうして私のお母さんは、みんなのお母さんとちがうの?」と悩む娘に、「みんなとちがうことは恥ずかしいことではなく、愛すべきことなんだよ」というメッセージを込めてこの物語を紡いだのだそうです。
本書は、誕生から85年を経て、日本で初めてオリジナルの絵が使われ、さらに日本初の全訳が実現した特別な一冊。中井はるのさんによる翻訳は、声に出すとまるで歌うようにリズムよく読め、読み聞かせにもぴったり。ところどころにユーモアが散りばめられ、あっという間に物語に引き込まれることでしょう。
「みんなとちがう」ことは決して恥ずかしいことではなく、ちがうからこそ輝けることがあるという励ましのメッセージは、今なお変わらず心に響きます。自分の個性を受け入れ輝きはじめるルドルフの姿、そしてこれまでいじわるをしていた仲間たちが自らの行いを見つめ直す場面には、子どもも大人も多くの気づきを得るのではないでしょうか。多様な個性を認め合う現代だからこそ、より一層大切にしたいものが伝わってくるように感じます。
今年のクリスマスは、85年前から届いた希望のメッセージに思いを寄せながら、親子でこの絵本を開いてみませんか。読み終えたあとに「赤鼻のトナカイ」を歌ったり聞いたりしてみると、感じ方が変わっているかもしれません。赤・白・黒を基調とした洗練された表紙のデザインは贈り物にも喜ばれることでしょう。日本での全訳『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』の誕生によって、物語に込められたメッセージが温かな希望となり、さらに多くの子どもたちへと広まっていきますように。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)

ピカピカ光る赤鼻をもつルドルフは、いつもみんなの笑いもの。
でも、クリスマスのまえの夜に、奇跡が起きて……!?
これからを生きる子どもたちに手渡したい、希望があふれる物語。
アメリカのデパートから始まった、世界一有名なトナカイの物語。85年の時を超え、初版と同じ絵・全訳で、ついに日本にやってきました。
メイが幼い娘の反応を楽しみながら紡いだ文は、ユーモアたっぷり。ギレンが描いたおちゃめな絵は、読む人の心をあたたかく照らします。
仲間外れのトナカイが幸運をつかむ ──。希望あふれる一冊は、贈り物にもぴったりです。
この絵本は、アメリカの老舗デパート「モンゴメリー・ワード」が、お客さんへの無料の贈り物として1939年に制作したものです。
おはなしをつくったロバート・L・メイは、当時そのデパートで働くコピーライターでした。執筆を始めたころ、がんを患う彼の妻は寝たきりになっていました。当時4歳の幼い娘は、「どうして私のお母さんは、みんなのお母さんとちがうの?」とメイにたずねたといいます。メイは、そう悩む娘に希望を与えたいという想いから、「みんなとちがうことは恥ずかしいことではなく、愛すべきことなんだよ」というメッセージを込め、この物語を紡ぎました。
完成後、この絵本は何百万部もの大ヒットになりました。たくさんのグッズや日本でもおなじみの曲も生まれ、ルドルフの物語は今もなお、世界中で愛され続けています。
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