すずらん通りにある町いちばんの洋菓子屋さん、金泉堂。
特に、ショートケーキ、シュー・ア・ラ・クレーム、エクレールなどは舌もとろけそうなうまさで、金泉堂の洋菓子をいくつたべたかが、子どもたちのじまんの種にもなっているという憧れのお店です。その金泉堂と子どもたちの間で何やらトラブルが?!
それは、光一と明が学校の帰り道に金泉堂に立ち寄った時のこと。2人がショーウインドーに飾ってあるチョコレートのお城をのぞいていると、いきなり目の前のガラスが割れて、出てきたお店の人に犯人扱いされてしまうのです。支配人、そして社長の谷川金兵衛氏の前に連れていかれる2人。「やっていない」といくら言っても信じてもらえず、ただひとり信じてくれたのは、桜井先生という若い女の先生だけでした。
くやしくて気がおさまらない光一は、金泉堂の大事な看板であるチョコレートのお城を盗む計画を立てます。そう、これは子どもたちの名誉をかけた戦いなのです。光一はまず仲間を集め、入念に計画を練っていきます…しかし思わぬところに、落とし穴が。金泉堂VS子どもたちの戦いの行方は、子どもたちに優勢になったり、金泉堂に優勢になったり…、後半に続くどんでん返しには何度もハラハラさせられて。けれどもジェットコースターのような展開のあとには、何ともすっきり、気持ちの良い読後感が残ります。
登場するキャラクターの面白さや、子どもたちらしい発想の数々がなんともユーモラス。楽しいお話にぴったりのさし絵を書いているのは北田卓史さん。国語の教科書でもおなじみの『車のいろは空のいろ』の絵を書かれた方ですから、絵を見て懐かしく思われる方も多いのではないでしょうか。
まるでそばにいる友達がしゃべったり考えたりしているような生き生きとした登場人物たちの姿に、読む子どもたちは共感し、応援しながら読んでいくことでしょう。さらに大人たちの1本筋が通ったいさぎよさにも好感が持てて、ぜひ大人の方にも読んでいただきたいお話です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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