しばわんこの和の行事えほん しばわんこの和の行事えほん しばわんこの和の行事えほんの試し読みができます!
絵・文: 川浦 良枝  出版社: 白泉社 白泉社の特集ページがあります!
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「いわば私はトランスレーター(翻訳者)だったと思っています」

───そして屋久島から戻ってきて、絵本の執筆に入ったんですね。

屋久島に行って、やるべきことや伝えたい思いがはっきりしたので、文章はすぐに書きあげました。「わたしは樹だ」という最初の一行を書いたら、最後まで一度も手を止めることはありませんでした。いわば樹や自然が語っていることを聞きながら、それをトランスレーター(翻訳者)として受信しているような感覚に近かったかもしれません。

───一気に書き上げることができるくらい、屋久島での体験が松田さんの中でしっかり消化されて、樹やそこで出会った人の気持ちに共鳴していたんですね。

その通りで、屋久島は私がこの絵本を通して伝えたかった、ちゃんと生を全うして、次に命を繋げて、死ぬことの大切さ、生と死が断絶したものではなく、地続きにあるということが、ありありと見える場所だったんです。今回、文章は不自然な創作はせず、ただただ淡々と事実を書くことに専念しました。種が落ち、芽吹き、根をはる。一本の樹がたっているためには、目に見えないさまざまな物の力がかかわっているのだということなど。本当のことをちゃんと書いていけば、読者にもきっと何かが伝わるだろうと思ったんです。自然が示し続けてくれている巨きな合図を、しっかり読み取ることが大切なんだということに徹しました。

───この作品を読んでハッとしたのが、最後のページに描かれている、「きびしいけれど、恵みぶかい島―― 屋久島」というところでした。屋久杉は岩だらけの厳しい環境で育っているけれど、それを悲観することなく「恵みぶかい」といえるんだなと。

屋久島の山師の方に言わせると、きびしい環境に育っている樹の方が強くて、割る時は素直にすぱっと割れるんだそうです。それに、杉の平均寿命は実はそんなに長くないんですって。それなのに、なんで屋久杉が何千年も生きていられるのかというと、過酷な環境で育っているからでもあるというんですね。一年で育つ幅も本当に少しですから屋久杉の年輪は虫眼鏡で見たくなるほどつまっている。今日、ちょうど持ってきたこのペンダント、これ屋久島で買ったんです。この年輪もすごく細かいんですが、それだけじゃなくて、買うときにお店の人に、「できるだけ苦労した樹をください」って言って選んでもらった(笑)。

───苦労しているかどうか、見ただけで分かるんですね。

私も不思議に思って聞いたら、木は自分が傷つけられるとカラダから油分を出して自己治癒するんですって、その油が次第に黒くなるから、お店の人は、このペンダントの木の黒くなっているところを指して、「ほらね、これは苦労している」と教えてくれました。そうでなくても、雨の多い屋久島の杉は、他の地域の杉よりも油分を多く持っているんだそうです。雨が多いということは恵み深いということにもつながりますが、保水力もなく根をさしこむこともできない岩の島という過酷な環境で育たなければならなかったことが、屋久杉の特徴と寿命、その他いろんなことに繋がっていると知ったとき、「なんだか、人と似てるなあ」と思いましたね

───木の苦労が、私にはすごく美しいものに見えてきました。松田さんが受信した樹の言葉を、絵として描き上げたのがnakaban(ナカバン)さん。抽象と具象が見事なバランスで描かれた、素晴らしい作品に仕上がっていますよね。nakabanさんに絵をお願いしたのは、松田さんの希望ですか?

編集者さんと色んな候補者の方を出していって、最終的にnakabanさんに描いてもらおうと決まりました。どうしてかと問われても言葉化できないけれど、きっとnakabanさんなら、この世界を同じように受信して、全く違った表現で発信してくれるという確信がありました。

───nakabanさんも屋久島に行かれたんですか?

時間的なこともあって、行かずに描くという結論を選ばれました。それにもしかしたら、目で見てしまうと、文章以上に、どうしてもリアルに引き寄せられてしまう部分が出てくるかと思います。nakabanさんの、具象的なタッチと抽象的なタッチがページをめくるごとに大胆に表れる構図は、屋久島に行かなかったからこその表現だと思うと、結果的には大正解だったんじゃないかと思います。


nakabanさんのアトリエで、原画を並べて確認したときの様子。

───松田さんはnakabanさんと絵本のやり取りをするのは初めてでしたか?

以前お話しした「宮沢賢治の絵本シリーズ」で、すでに依頼はさせていただいているのですが、そちらはまだスタートしていないので、仕事をするのは初めてでした。どんなやりとりになるのか未知数でしたが、ありったけの資料と私たちの体験談をお伝えして、nakabanさんからも絵本の展開に対する相談が来るなど、何度もやりとりを繰り返しながら、気持ちよく作品を磨き上げていくことができました。

───nakabanさんの手にかかると、根や土や苔、菌が、驚くような色合い、形で表現されていて、グッと世界に入っていくような感覚になりますね。

そうなんです、地球のマグマの表し方や、樹を下から見上げる構図など、素晴らしいですよね。広島にあるnakabanさんのアトリエに何度かうかがって、画を並べて、いろいろ意見も言いあい、試行錯誤の末に、こんなに素晴らしい絵を仕上げてくださったんです。

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松田 素子(まつだもとこ)

  • 1955年山口県生まれ。編集者、作家。児童図書出版の偕成社に入社。雑誌「月刊MOE」の創刊メンバーとなり、同誌の編集長を務めた後1989年に退社。その後はフリーランスとして絵本を中心に活動。これまでに約300冊以上の本の誕生にかかわってきた。各地でのワークショップを通して、新人作家の育成にもつとめており、なかやみわ、はたこうしろう、長谷川義史など、多くの絵本作家の誕生にも編集者としてたちあい、詩人まど・みちおの画集なども手がけた。また自然やサイエンスの分野においても、企画編集、および執筆者として活動している。

作品紹介

わたしは樹だ
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文:松田 素子
絵:nakaban(ナカバン)
出版社:アノニマ・スタジオ
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