もうなかないよ、クリズラ もうなかないよ、クリズラ
作: ゼバスティアン・ロート 訳: 平野 卿子  出版社: 冨山房 冨山房の特集ページがあります!
読み手の年齢を選ばない子どもから大人まで、それぞれの感性で理解してうけとめる事のできる「みんなの本」です。
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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  鏡のしかけが生み出す、驚きの三次元空間!「かがみのえほん」シリーズ わたなべちなつさんインタビュー

難問がつぎつぎと…

───この黒い本のシリーズを見て、編集者さんはどう思われたのでしょうか。


(編集者):わたなべさんがもってきてくださったこの黒い絵本を、その場でひらいてみた瞬間、「おおぉぉっ!」と、衝撃を受けました。これは・・・すごいけど、むり!と思いました(笑)。


私も、だめだろうなあと思っていました(笑)。

───えっ、むりというのは? 販売面でむずかしいという意味ですか?

(編集者):というよりは、こういったしかけを、絵本として実現させるには、あまりにも制作上の課題が多いだろうと感じたのです。しかも、子どもの本として、ある程度価格を下げて、量産するとなると・・・。とても高価な本になってしまうと、読者の手に届かないので・・・。
でもあまりに魅力的だったので、とにかく一度もちかえらせてください、とわたなべさんにお願いをして、編集部にもちかえりました。そして編集部で見せたら、みんな「うおぉっ」と(笑)。
しかしやはりハードルが高いねという声が多かったです。

───予想されるハードルが高い。けれど、一発で魅了されたのですね。

(編集者):はい。社内の制作部門で惚れ込んでくれた人たちがいて、“かがみのえほん”実現のための方法を一緒に考えてくれたことは大きかったです。色々なやり方をひねりだし、協力してくれた結果、このようなかたちに実現させることができました。
私のふだんの仕事は編集業務なので、印刷や製本に関する実働的な部分は制作部門が対応してくれているのですが、今回は印刷製本の現場に立ち会う機会に恵まれて、すべての過程に関わることができ、勉強になると同時にとても楽しい仕事でした。

───具体的にはどのような課題があったのですか? 


まず、かがみのような紙に印刷しようとすると、ビニール袋に印刷された透明な柄みたいに、向こう側にすけてしまうんです。
だから、まず白いインキをひいて、不透明な部分を作る。その上にさらに色をのせる、と別々の工程が必要になります。そして、インキも特別なインキを使うことになります。

───インキは特殊。工程も増える。そして紙もまた、特殊ですよね。

(編集者):アルミを蒸着した特殊な紙をつかっています。そして各ページに「PP加工」といってポリプロピレンのフィルムをかけてあります。通常は表紙やカバーにかけることが多いのですが。
本文にPP加工をするのは私も編集者としてはじめての経験でした。ここでまた費用があがる。かがみのうつりこみが少し弱くなるし・・・でも指紋がついたり傷がついたりの課題をクリアするためにも、PP加工するべきだろうと。

ひとつの課題に決着をつけた、と思う間に、またべつな課題が浮かんできて、それをどうするか、と。そういうことのくり返しでした。

ベルギーと日本で試行錯誤を重ねた一年間

───印刷面などの試行錯誤の一方、なかみの制作にも時間をかけられたと思うのですが。編集者さんにお会いしてから出版まで、何年くらいかかっているのですか?

編集者さんとお会いしたのは、2年半ほど前ですね。それから夫の仕事で一年間ベルギーに行くことになり、ずっとgoogleのハングアウト(スカイプのような、一種のテレビ電話)でやりとりしていました。
ベルギーで朝7時、日本で午後3時に、「おはようございます」「見えますかー。こ、この角度なんですけど・・・あっ光っちゃう」という感じで(笑)。

ベルギーではページの展開をいくつも作りました。実際に絵を描いて、出てきた絵のなかから、「このあたりがおもしろい」「じゃあ、このような感じでまとめてみましょうかねえ」と編集者さんと話し合いました。

───黒い本のシリーズを元にしたのではなく、一から作られたのですね。

(編集者):とにかく、わたなべちなつさんのこの世界観、考えていらっしゃる原理の単純さ、飽きのこない感じ。それを手にしたときの驚きや、ワクワク感が素敵だなと思ったので、それをデザイン性の高いアートの世界から、子どもたちにより届けやすい世界に、もっていくにはどうしたらいいかなと、ずっとわたなべさんとお話していました。
そして『ふしぎなにじ』と『きょうのおやつは』が2冊同時に進行し、できあがりました。

───絵だけでなく、本文もわたなべさんが書かれたのですか。


本文も、表紙も帯も、奥付まで、ぜんぶやらせていただきました(笑)。

───さすが、グラフィックデザイナーさんとしてのお仕事経験がありますものね!

『ふしぎなにじ』は文章の推敲にあわせて、絵を描きなおしたりもしました。


「おやおやかがみがどんどんふえて・・・」初期の絵。判型も大き目(左右、正方形)です。


こうなりました! 判型も少し小さくなり子どもの手にちょうどいい!(4歳の子が手にしています)

(編集者):文にあわせて絵も変化させるのは、絵本作りにはよくあるやりとりですが、そういったところでも、望む以上のボールをいつもわたなべさんは返してきてくださいました。
じつはわたなべさんの具体的・具象的な絵をはっきり拝見したことがない関係(黒い本のみ)ではじまったので、ドキドキもあったんですが、まったく不要な心配(笑)。『きょうのおやつは』はちょうどよくリアルでかわいらしい絵になりました!

美大受験のために、浪人しつつ日夜デッサンを描いていたときの努力が・・・いまようやくここで役立ちましたね!(笑)

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わたなべ ちなつ

  • 筑波大学芸術専門学群卒業。グラフィックデザイナーとして家庭用品メーカーに勤務の後、現在は愛知県立芸術大学大学院に在籍している。「しかけの視覚伝達デザイン」をテーマに、作品を製作している。

作品紹介

ふしぎなにじ
作:わたなべ ちなつ
出版社:福音館書店
きょうのおやつは
作:わたなべ ちなつ
出版社:福音館書店
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