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写真・文: 森上信夫  出版社: フレーベル館 フレーベル館の特集ページがあります!
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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  おとなになることが楽しみになる絵本『もとこども』発売記念 富安陽子さん、いとうひろしさん対談インタビュー

何回でも遊びに来られる、広い世界を作りたい。

───絵本や物語を作る方は、やはり子どもの頃の世界を持ち続けてお話を書かれるのでしょうか。

富安:自分が子どもだったことは忘れられない職業ですね。そこは切り離しては考えられないです。

いとう:大人と子どもの差は何だろうと考えたとき、大人は子どもの部分を隠しているだけじゃないかと思うことがあります。大人も子どもも素材は全部一緒。いろんなことがうまく機能したり、コントロールできるようになったのが「大人」というだけで。だから今も、子どもの自分と一緒に生き続けている気がします。

───富安さんもそうですか?

富安:私も、子どもに向けた物語を書こうとしたとき、やはり自分自身の小さい頃のことを手掛かりにしています。どんなときにドキドキしたか、どんなことが嬉しくてどんなことが悲しかったか、何にチクショーと思ったか。問いかけながら書く感覚はあるなと思います。

───主人公や登場人物の年齢だったときの自分を振り返る?

富安:その時々の自分を思い出しつつ書く、ということはたくさんあります。その年齢の自分が残っているんですよね。いろんな年齢の自分が年輪のように積み重なっていて、そこを見に行くという作業です。




あ、危ない・・! わんぱくな男の子の姿は、少年時代のいとうさんそのもの?!


ひよこやオタマジャクシ、アオムシの表情が何とも言えず可愛い・・・!


「EEコ」=いい子、「GM」=グランマ(おばあちゃん)など、Tシャツのロゴも要チェックです。


ラフ画でアップや引きを試して、今の構図になった電車のシーン。
この場面は、特に見せ方を工夫されたそう。

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───色鉛筆で描かれた色彩が明るくとても美しいです!

いとう:この絵本は、まず絵の雰囲気を重くしたくないなと思いました。可愛らしさとか、「うふふ」と笑える感じを大事にしたくて。さらっと描いているように見えてなかなか手の込んだ描きかたをしているんですよ。

富安:原画を見る機会が普段あまりないので、今日はいとうさんの原画が見られて本当にうれしいです。 いとうさんの絵って、どんな読者にも開かれていて、それなのに誰にもこびない世界をきちんと持っておられるでしょ。いとうさんの絵のおかげで、この絵本の世界が完成しました。何もないところから、最初の何かを作りだすのが作者の仕事ですが、そこから世界を可視化して広げていくというのは、絵本の場合、絵がないと成り立たないわけですから。

いとう:合作の場合、作者と画家は、絵本観も子ども観もきっとぴったり合うわけじゃないけれど、その中で、遠慮しないことだと思っています。絵本の中で言葉が持つ広がりと同じくらい、絵も広がりを持たなかったら、絵本の絵としては失敗だろうなと思うわけです。

富安:絵本はとても難しいですね。絵本って、基本15見開きからできているものですが、小さい子をたった15場面引き寄せておくって、ものすごく大変なことなんですね。でも好きになると何回でも絵本の中に遊びに来てくれる。だから私も絵本を作るとき、15場面完結の物語を作ろうとするのではなく、そこを入り口に入ってこられる、できるだけ広い世界を作るというイメージでいます。何十回、何百回と読むことに耐えうる絵本というのは、その世界が出来上がっているんですよね。

───富安さんご自身、絵本の物語をつくるのは難しいということですか?

富安:はい、難しいですね。文章を書ける人が絵本のテキストを書けるわけではないし、絵がうまければ絵本が作れるというわけではないと思います。ただ、言葉と絵が響きあったときに、絵本はすごい力を持つんです。

いとう:絵本は、物語の文章ともタブローの絵とも全然違う。極端なことを言うと、絵本って、描かれていないことを楽しむものだと思うんです。イマジネーションを膨らませるのが絵本の楽しさなわけじゃない?ぼくも、絵本は、「絵本」という広場を用意しているという感覚が強いです。道具も材料もきっかけも作ったから、さあ君たち何して遊ぶの?って。

───この作品は「大人」と「子ども」という概念的なテーマがあって、他の富安さんの作品からイメージする物語絵本とは少し違う印象がありますが、その点で世界のつくりかたに違いはなかったですか?

富安:そうですね。ちょっと今までと違うかもしれないですね。でも、どうやってこの世界にひっぱりこめるか、ここで何をして遊んでくれるか、という意味では一緒かなと思います。

いとう:起承転結のあるものを物語ととらえる人が多いけれど、絵本というのは、入り口から出口まで、一貫した何かがずっと繋がっていて、それがストーリーなんです。
この絵本も、いわゆる起承転結があるわけじゃないけれど、構成を見ると2拍子のリズムが続いて、最後に違うリズムがあって、体で感じる物語を作り上げている。

全体の構成がいかに気持ちいいものになっているか。さらにくりかえしのリズムが少しずつ変調していって世界がどんどん広がっていく。この作品を、ぼくは見事な絵本の物語だと思っています。

富安:この絵本の、今と昔の対比というテーマは、子どもにとってはなかなか理解が難しいことです。お父さんお母さんに、昔若いときがあったっていうだけでも、結構距離感のある旅なんですけど、そこからもうひとつ時代を巻き戻して「子どもだった」というところまで連れて行きたかった。今回、いとうさんの絵のおかげでそれができて、子どもたちは面白い世界を遊べるんじゃないかなと思っています。そういう意味でも、いとうさんという画家さんに絵を描いていただけたことは、この本にとって、とても幸福なことでした。
またいつか、ぜひいとうさんに描いていただきたいというお話が書けたら、また挑戦状を送りたいと思います。

いとう:よーし、待っててやろうじゃないか(笑)。

───私たちも楽しみにしています! 最後に、おふたりが子どものころになりたかったものを教えていただけますか?

富安:私は、小学校にあがる前、按摩さんになりたかったことをおぼえています。小さい頃、よくおばあちゃんのマッサージをしていたのですが、おばあちゃんのところに出入りしていたプロの按摩さんにライバル心を燃やしていました。技を盗もうと、マッサージしているところへ偵察に行きましたね。按摩さんの黒い装束と笛がかっこよかったんですよ。

いとう:ぼくは特になりたいものがなかったですね。小学生ときは、野球選手とか漫画家になりたいなんて言ったこともあるけど本気じゃなかった。ただ、自分が勤めに出るイメージが持てなくて、何となく「手に職」だなと思ってはいました。ぼくは、子どもに夢を持てって言ったり、人生設計のシミュレーションをさせたりするのも違和感があります。ぼくの場合、なりたいものがなかったということも、今の自分の表現の仕事に繋がっている気がしますから。「何もなりたいものがなくたって大丈夫。なんとかなるよ、大人にはなるから。」って言いたいね。

───ありがとうございました!

インタビュー・文: 掛川晶子
撮影:所靖子

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富安陽子(とみやすようこ)

  • 1959年東京都に生まれる。児童文学作家。 『クヌギ林のザワザワ荘』で日本児童文学者協会賞新人賞、小学館文学賞受賞、『小さなスズナ姫』シリーズで新美南吉児童文学賞を受賞、『空へつづく神話』でサンケイ児童出版文化賞受賞、『やまんば山のモッコたち』でIBBYオナーリスト2002文学賞に、『盆まねき』で野間児童文芸賞を受賞。「ムジナ探偵局」シリーズ(童心社)、「シノダ!」シリーズ(偕成社)、「内科・オバケ科 ホオズキ医院」シリーズ(ポプラ社)、「やまんばあさん」シリーズ「妖怪一家 九十九さん」シリーズ(理論社)、YA作品に『ふたつの月の物語』など、著作は多い。

いとうひろし

  • 1957年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。独特のユーモラスであたたかみのあ る作風の絵本・挿絵の仕事で活躍中。おもな作品に 「おさるのまいにち」シリーズ(講談社刊、路傍の石幼少年文学賞受賞)、「ルラルさんのにわ」シリーズ(絵本にっぽん賞受賞)「くもくん」(以上ポプラ社刊)、「あぶくアキラのあわの旅」(理論社刊)、「ごきげんなすてご」シリーズ、「ふたりでまいご」「ねこと友だち」「マンホールからこんにちは」「アイスクリームでかんぱい」「あかちゃんのおさんぽ@A」「ねこのなまえ」(以上徳間書店刊)など多数。

作品紹介

もとこども
もとこどもの試し読みができます!
作:富安 陽子
絵:いとう ひろし
出版社:ポプラ社
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