ほげちゃん いなかにいく
- 作:
- やぎ たみこ
- 出版社:
- 偕成社
絵本紹介
2026.07.22
海にプール、スイカ割りに花火大会。太陽を浴びて、汗を吹き出して、冷たい麦茶をゴクゴク飲んで。夏にしかできないこと、夏だからこそ奮い立つ五感が特別なのは、体いっぱい、心全開で感じる季節だからでしょうか。子ども時代の夏の記憶は、大人になった今もふと蘇ってくることがあります。
今回は、夏にこそ読みたくなる絵本をピックアップしました。
雨上がり、庭で遊んでいたまきちゃんが作ったどろのお人形が突然「一緒に遊ぼうよ」と動き出し……『どろたん』は、どろんこ遊び大好きな子に贈りたいファンタジー絵本。
ペンギンのペンちゃんが初めてお泊まりに来て、なずちゃんは大はりきり!でもぺんちゃんはおうちに帰りたいと言い出して……『おとまりペンギン』はとびきりの夜を過ごす子どもたちの姿が愛らしいおはなしです。
モーリス・センダックの名作『かいじゅうたちのいるところ』は、夏の夜に読むとまた格別。ページいっぱいに広がるかいじゅうたちの国は、夢?現実……?
ワクワクドキドキ楽しくて、ちょっと不思議なおはなしの世界への冒険。夏に読んだ絵本もきっと、子どもたちの思い出の一ページに刻まれるのではないでしょうか。
出版社からの内容紹介
ゆうちゃん一家がパパの田舎にやってきました。ぬいぐるみのほげちゃんと、ねこのムウもいっしょです。おじいちゃんとおばあちゃんの広い家には畑があり、新鮮な野菜がたくさん実をつけています。近くには田んぼの風景がひろがり、いろいろな虫や魚がとれます。まさに楽しい夏休み……のはずなのに、ほげちゃんは怒り心頭! だっておじいちゃんに「ガマガエルにそっくり! がははは」と笑われたうえに、おばあちゃんまで「ゆうちゃんに新しいお人形を買ってあげようね」なんていっていたのです。「ふん! だったらいいよ。ぼく、もう出ていくから!」みんなの留守中に、家出したほげちゃん。一体、どうなるのでしょう?
だれより人間くさいぬいぐるみの「ほげちゃん」シリーズ第6弾。今回もほげちゃんの喜怒哀楽がぜんぶ詰まったお話で、読み聞かせにぴったりな1冊です。
この書籍を作った人
兵庫県生まれ。武蔵野美術短期大学卒。イラストレーターのかたわら絵本を学び、第27回講談社絵本新人賞佳作を受賞。「大人もいっしょに楽しめる、子どものための絵本」の制作をつづけている。絵本の作品に『くうたん』(講談社)、『もぐてんさん』(岩崎書店)がある。夫・娘・息子・亀・犬とともに千葉県松戸市在住。
この書籍を作った人
1948年、東京都生まれ。詩人、作家。詩集『ふ』によりH氏賞を受賞。また小説『高円寺純情商店街』で直木賞を受賞。他小説に『熊谷突撃商店』『荒地の恋』『ナックルな三人』(共に文藝春秋)、『むーさんの自転車』(中央公論新社)など、詩集に『ねじめ正一詩集』(思潮社)など著書多数。児童書には『ひゃくえんだま』『からっぽマヨネーズ』(共に鈴木出版)、『かあさんになったあーちゃん』『がっこうのうた』『あいうえおにぎり』(共に偕成社)、『ずんずんばたばたおるすばん』『ゆかしたのワニ』(共に福音館書店)などがある。
この書籍を作った人
1961年東京生まれ。スロヴァキア共和国のブラチスラヴァ美術大学で石版画を学ぶ。作品に『めっきらもっきらどおんどん』『ちょろりんのすてきなセーター』『きょだいなきょだいな』『おっきょちゃんとかっぱ』『まゆとおに』(以上福音館書店刊)、「おれたち、ともだち!」シリーズ(偕成社刊)、『赤いくつ』(女子パウロ会)、『もめんのろばさん』(ポプラ社)他多数。
みどころ
いたずらっこの男の子マックスは、今夜もおおかみのぬいぐるみを着ると大あばれ。
「この かいじゅう!」
おかあさんに怒られても平気で言い返す。
「おまえを たべちゃうぞ!」
とうとうマックスは夕飯抜きで寝室に閉じ込められた。
ところがその部屋に、にょきりにょきりと木が生えだして……気が付けばすっかり森の中。そこへ波が打ち寄せてマックスは船に乗り込んだ。長い時間をかけて航海すると、たどりついたのは「かいじゅうたちの いるところ」。すごい歯をガチガチさせて、うおーーっとほえて、目玉をぎょろぎょろさせ、すごい爪をむきだしている。なんて恐ろしい! でもマックスだって負けていない。
「しずかにしろ!」
怒鳴りつけると、マックスは魔法を使ってあっという間に彼らの王さまになってしまったのだ。彼らは一緒に踊り、遊び、森の中を行進し……。
コルデコット賞を受賞しているこの作品は、国際アンデルセン賞をはじめ、数々の絵本賞を獲得しているモーリス・センダックの代表作。世界中の子どもたちを魅了しつづけているロングセラー絵本です。
なんといっても魅力なのは、威勢のいい男の子マックスとかいじゅうたちの緊張感あるやりとり。あんなに迫力のあるかいじゅうたちが、彼の手にかかると何だか愛らしく見えてくるのです。それでもやっぱり小さな男の子。疲れ切ったあとに思い出すのは……おかあさんの懐かしいあの匂い。
豪快でちょっぴり恐ろしくもあるこの絵本。だけど読めばすっかりその世界に入り込んで夢中になってしまうのは、細かく小さなしかけの積み重ね。くるくる変わるマックスの表情に、本心を読み切れないかいじゅうたちの存在。現実と夢の行き帰り。それは永遠のようでもあり、ほんの一瞬のようでもあり。安堵の気持ちで絵本を閉じ、すぐまた読み返したくなってしまう。大人が読めば、子どもの内面の豊かさを思い出させてくれるような1冊でもあるのです。
この書籍を作った人
1928年アメリカ ニューヨーク生まれ。アート・スチューデンツ・リーグに学ぶ。『かいじゅうたちのいるところ』(冨山房)でコールデコット賞を受賞、その他『まよなかのだいどころ』『まどのそとのそのまたむこう』(冨山房)、『ロージーちゃんのひみつ』(偕成社)、『そんなときなんていう?』(岩波書店刊)、『くつがあったらなにをする?』(福音館書店刊)、『ミリー』(ほるぷ出版)他多数の作品がある。国際アンデルセン賞、ローラ・インガルス・ワイルダー賞、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞などを受賞。
この書籍を作った人
〈1932年-〉群馬県生まれ。青山学院大学名誉教授。児童文学評論、創作、翻訳など、幅広く活躍。おもな訳書に『アーサー・ランサム全集』(岩波書店)、評論に『世界児童文学案内』(理論社)、創作に『たけのこくん』(大日本図書)などがある。
みどころ
もしもウマだったら、一日中走りまわっちゃうし、行きたいところに行くし、妹を背中に乗せてあげたいな。水泳大会では、きっとひっぱりだこ!
どろんこの中を転げまわっても、おふろになんか入らないし、洋服だって着ない。……パレードの時以外はね。
ああ、大好きなウマになれたら、いいのにな。
純粋な子どもの夢を、画面いっぱいダイナミックに描ききったこの絵本。自由に走りまわったり、家の中で好きに過ごしたりするウマの姿の迫力といったら! 幸せそうな表情といったら! 体の動き一つ一つから喜びが伝わってきます。
けれど、丁寧に描かれた背景の絵や、主人公の気持ちのこもった言葉一つ一つをかみしめているうちに、この子がウマに憧れる気持ちの理由を知り、ハッと胸を突かれます。プールサイドに置かれた車椅子。いつもは泳いでいる子を応援するばかりなのです。
自由でいたいこと。それだけでなく、妹をもっと喜ばせたいし、おにいちゃんをもっと驚かせたい。開放的な外の景色にくらべ、細やかに描かれる家の中の様子や、さまざまな絵やポスターが飾られた部屋のすみずみ。じっくり見れば見るほど、彼女を取り巻くたくさんの物語が浮かびあがってくるようです。
作者は、 コールデコット賞を二度受賞しているオーストラリア生まれの画家ソフィー・ブラッコール。その絵は一度見たら忘れらないほど美しく繊細で印象的。中でもこの作品からは、特別な思いが伝わってきます。
絵本をとじた後、もう一度考えてみて。もしもあなたがウマだったら……って!
この書籍を作った人
1960年東京都生まれ。スウェーデン法の研究者だった父の影響で、幼い頃よりスウェーデンの文化に親しんで育つ。慶應義塾大学卒業後、スウェーデンのウプサラでスウェーデン語を学ぶ。児童書を中心に、翻訳を多数手がける。訳書に「セーラーとペッカ」シリーズ(偕成社)、『長くつ下のピッピ ニュー・エディション』(岩波書店)、『ニルスのふしぎな旅』(福音館書店)、「ステフィとネッリの物語」シリーズ(新宿書房)など。
文:竹原雅子 編集:木村春子