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お金の使い方と計算がわかる おかねのれんしゅうちょう

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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「Z会グレードアップドリル」シリーズ『まなべる おかねとしゃかい』監修・あんびるえつこさん 編集・七五三恭世さんインタビュー

地球規模で「お金」を考えたら? 人としての総合力を育む秀逸な問題

───ドリルの問題には、お金の計算や経営に関わること以外に、生活に必要なものを選ぶ珍しい問題もありますね。

あんびる:実際の生活では、おもちゃやおかしなど自分が欲しいものだけではなくて、生活に必要なものだって買わなくてはいけません。経済学的の「希少性」とか「トレードオフ」という概念になりますが、自分が欲しいと思うものがすべて手に入るわけではないという状態で、「お金をどう使えばよいのか」を考え、意思決定する問題も含まれています。

七五三(しめ):特に決まった答えがある問題ではないので、親子で話し合いながら、それぞれの家庭なりに「お金に対する考え方」を共有してもらうのが、ねらいですね。



「お金」で自分の身近なものを買うだけでなく、社会全体での使いかたまで視点を広げたユニークな問題。決まった答えがないので、親子で自由に意見を交わしながら楽しめる。

あんびる:14の「なくては こまる ものと ほしい もの」という問題だと、お母さんは化粧品が必要だと思っているけれども、子どもはゲームやサッカーボールが必要だと言うかもしれません。同じ問題に親子で取り組むことで、自分と他人では必要だと思っている物が違うことや価値観の違いについて、新しい発見があると思うんです。

七五三(しめ):制作の中で、モニターの方にドリルをやってもらったのですが、そのとき、24の「ちきゅうに やさしい おかねの つかいかた」で、とても興味深い出来事がありました。


この問題は、「自分がやったこと」に対して「どんな結果になるか」を考えさせるものですが、あるお子さんが「ゴミを捨てる場所がないなら、ブラックホールに捨てればいい」と言ったんです。そうしたら保護者のほうが「ブラックホールなんて言葉を知っているの?」と驚いて。でも、「ブラックホールに捨てたら、ゴミはなくなるの?」と聞いたら、少し考えて「ブラックホールの人たちが困るから、やっぱりダメだね」という答えにたどり着いたんですよ。

あんびる:ブラックホールに人が住んでいるんですね(笑)。突拍子もないけれど、子どもらしい自由な発想がすばらしい!

七五三(しめ):子どもなりのロジックを作って考えていく、まさに「プログラミング思考」の実践になっているんです。それは、あらかじめ答えが決まっているドリルを解いて「できたね、すごいね」というものだったら、生まれてこないと思うんですね。作り手である私たちにとっても、大きな発見になりました。

あんびる:限りある資源をだれかが使ってしまったら、使えなくなる人がいるという考え方も、「希少性」の概念になります。この概念を学校で習うのは、新しい学習指導要領によると中学校の社会科の公民的分野ですが、生活を通して理解していく最初の入口にしてほしいなと思って作りました。だから『まなべる おかねとしゃかい』というタイトルが、すごく大事なんです。

───5〜7歳向けのドリルに、中学校で習う内容の「種」が入っているんですか?

あんびる: そうなんです。先ほど七五三(しめ)さんのおはなしに出てきたブラックホールの話を例にすると、「ブラックホールにゴミを捨てる」というのは問題発見能力や思考力を、「ブラックホールにいる人が困る」というのは、共感力や想像力を育てます。そして、自分の考えを保護者に伝えるのは、言語能力を育てる。ひとつの問題に対して、いろんなアプローチで考えて答えを出せる人間こそが、これからの社会を生きぬく力になります。 


私がお金教育で目指しているのは、お金をうまくやりくりすることだけではなく、将来的に自分が稼げるのか、そして自分たちの力でよりよい社会に変えていくことができるのかです。その見通しのもとで、お金との関わりかたを教えていきたい。そういう意味でこのドリルは、挑戦的で深みのある1冊になったと思います。

───もうひとつ今の時代を象徴しているのが、ICカードでキャッシュレスについて説明している問題です。目に見えないけれど「お金」であると、子どもにわかるように説明するのは、親でも大変です。

あんびる:ドリルでは、「現金」と「カードに入っているお金」が違うこととお金の流れを、きちんと見える形で説明しました。「現金」をキャッシュディスペンサーでカードにチャージする場面を絵で見せ、電車代がカードのお金から支払ったことも「現金」に置き換えて見せています。

───最初に現金についていろいろ学んだことが、後ろの問題について考える基礎知識になっているんですね。

あんびる:そうです。今のキャッシュレス社会は、「目に見えない」からこそ、子どもにとってすごくわかりづらい世界になっています。子どもからすると、「ピッ」とするだけで買い物ができるICカードは「魔法のカード」。キャッシュディスペンサーも、「なんかお金が出てくる機械」であって、肝心の「お金」がどこから来ているのか、想像もつかないんです。親御さんからも、「うちの子は、お金のありがたみがわかっていない。どうすればわかってもらえますか?」と質問がよくくるので、53「おかねは どこから くるのかな」という問題を作りました。

───なるほど。「働くとお金がもらえる」ことを教えるために、家のお手伝いで小遣いを稼ぐ方法はどうでしょうか?

あんびる:難しいと思います。例えばお風呂そうじ1回が10円だとします。がんばってお掃除して10円稼いでも、おじいちゃんおばあちゃんの家に遊びに行くと、それだけでお小遣いを1000円もらったとしたら、がんばる方が損だと思ってしまいますよね。あるいは「窓を閉めて」とお願いしたら「いくらくれるの?」となってしまう。特に欲しいものがない場合は、窓も閉めないしお風呂も掃除しないという考えかたになるかもしれません。


ですから私個人の考えとしては、家庭内労働は社会経済と分けたほうが良いと思っています。「お金がどこから来るのか?」をきちんと伝えて、いろんな人の手を渡ってから自分たちのところにくるものだよと、ドリルを通じて学んでもらえたらうれしいですね。

───おふたりのお話から、「お金」と「社会」をつなげて学ぶことが、今後の生活でもすごく役に立つことがわかりました。実際子どもには、何歳ころから「お金」について教えていくのがいいんでしょうか?

あんびる:私は「あれ買って、これ買って」がはじまる、自我が芽生えた2歳くらいからをオススメしています。そして、最初に親が子どもに「我慢すること」=「欲しいものが全部手に入るわけではない」ことを教えます。「我慢」は、自分でお金を使うときになった段階で、「なにを買って、なにを諦めるか」という選択をするための基礎力になるんですよ。

───そうだったんですね! 子どもが小さいころ、カードゲームに夢中になっていた時期がありました。1回の金額が小さいので「ま、いいか」と出かけるたびに遊ばせていたら、小銭がないときに諦めさせるのにすごく苦労して……。やはり、最初が肝心だったんですね。

あんびる:でも「お金を使う」こと自体はとても良い経験です。「我慢」が行きすぎると、「無駄遣いになるからなにも買わない」と言うお子さんが出てきますが、お金は使わないと意味がありません。みんなが貯めこんでいたら、経済が回らなくなってしまうでしょう。


でも、2歳から少しずつ「我慢」と「お金を使うこと」の両方を教えていけば、5〜6歳になると、自分で買う物を選べるようになります。ドリルでは、1000円のお小遣いを持って、遊んで帰ってくるという問題で学べるようになっています。

七五三(しめ):歩ける距離なのに楽をして駅までバスに乗ったり、遊園地で乗り物やおみやげにお金を使いすぎると、お金が足りなくなって好きなおやつを買えなくなったり、歩いて帰らないといけなくなったりするんです。往復の電車代がないと、お家に帰ることができないからどうすればいいのかなど、お金の使い道を自分で考えて決める練習になっているんですよ。

───すごくおもしろい問題ですね! 実際にやろうと思っても、雨が降っていたり親自身が疲れていたりするとバスに乗りたくなるし、電車の中でぐずると困るからおかしを与えてしまったりと、ハードルが高そうなので…。

あんびる:だからドリルでシミュレーションしてほしいんです。ドリルなら、どんな失敗を何度繰り返してもだいじょうぶだし、むしろいっぱい失敗させてほしい。考えの浅さや知識のなさでお金を失う「痛み」を親が教えるということが、子どもにとって大切なことなんです。


「お金」も「お金の流れ」も見えないまま大きくなると、スマホのゲームで何十万と課金したり、カード破産するくらいクレジットで買い物をしてしまったりと、親が大きな損失を受けることがあるかもしれません。そうならないための「経済観念」を子どもに身につけてもらうのに、ドリルという安全な範囲で大いに失敗させて、痛い目をみてもらう。それが、親子でドリルに取り組む意味ですね。

───「お金」のことを学ぶ大切さがよくわかりました。最後に、絵本ナビ読者へのメッセージをお願いします。

七五三(しめ):「おうちのかたへのメッセージ」ヒントにして、親子で楽しく、順番や枚数も自由にご家庭のスピードに合わせてやってもらえたらうれしいです。

あんびる:私自身が、つい最近子育て卒業を迎えました。振り返ると、親子でべったり会話をして、お互いに考えていることをぶつけ合う機会は、本当に幼児期までだったなと思うんです。ドリルをやったときに「なんでわからないの!?」とケンカをしたこともありますが、それはそれでステキな時間だったなと、今になって実感しています。ですから、今子育てしているかたには、そのステキな時間を子どもといっしょにすごして、いろんな会話をして、子どもの考えかたや成長に触れながら、貴重な時間を堪能していただけたらなと思っています。

───ありがとうございました。



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取材:中村美奈子

撮影:所 靖子(絵本ナビ)

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あんびるえつこ(アンビルエツコ)

  • 生活経済ジャーナリスト。NPO「子供のお金教育を考える会」代表。ファイナンシャルプランナー。文部科学省 消費者教育アドバイザー。執筆活動や講演活動などで、子供の金銭教育活動に注力している。著書に「アクティブ・ラーニングで楽しく! 消費者教育ワークショップ実践集」(大修館書店)など。

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