●男の人はいくつになっても「ママっ子」?!
───『ママのスカート』はフランスの出版社から刊行されている絵本ですが、千倉さんはどういった経緯でこの絵本と出会われたんですか?

『まってる。』(作: デヴィッド・カリ 絵: セルジュ・ブロック 訳: こやまくんどう 出版社: 千倉書房)
───最初の印象はいかがでしたか?

───息子がいるママ視点で見ると、本当にかわいくて、心がほんわり温かくなる絵本ですよね。
───お母さんに向けてという意味と合わせて、幅広い層の女性に読んでほしい作品ですね。

●翻訳者にお願いするときは、直感を大事にしています
───そして、ビックリしたのは訳者として木村カエラさんを選ばれたこと。実際に読んでみると、木村カエラさんということが浮かび上がってこないくらい、作品にマッチしていると感じました。
ありがとうございます。木村カエラさんも、まずこの絵本に「アーティスト」として参加してくれて、作品の良さを一番に伝えたいという思いで関わってくださったこと、それがとても嬉しいです。
───木村カエラさんに翻訳をお願いしようと思ったのはなぜですか?
直感です。
───直感!?
───特に木村カエラさんにお願いしたいと直感が働いたポイント、フレーズなどはありますか?

───木村カエラさんとのやり取り、翻訳のやり方などはどのように進めていったのでしょうか?
最初、私たちの方で訳した直訳の文章をお渡しして、文章を考えていただきました。カエラさんの翻訳方法は、ポストイットに浮かんだ言葉をどんどん書いていって、ページに貼っていかれて、何通りもの訳の中から最終の文を選んでくださったみたいです。

───翻訳のやり取りの中で、特に印象に残っていることはありますか?
ぼくとマティアスがプールで泳いでいるページを「このプールは羊水とも受け取れるのではないでしょうか」とおっしゃったんです。そして、はしごを上ってすべり台で降りるシーンは、赤ちゃんが産道を通って出てくる、出産のシーンにも受け取れると。それを聞いたときは「面白い解釈だな…」と感じただけだったのですが、あとで、カエラさんが2人目のお子さんを妊娠されていたと聞いて納得。赤ちゃんはお腹の中で、安心で、お母さんも幸せな貴重な時間ですよね。深く読みこんでもらって感激しました。
───スカートをめくるというしかけが特におどろきで、新しい!ですよね。千倉さんは実際に、本ができる場面にも立ち会われたそうですが…。
そうなんです。サルバカンはフランスの出版社ですが、印刷と製本をマレーシアの会社が行っていたので、「見せてください!」とお願いして製本される現場に伺いました。
マレーシアの工場で千倉さんが撮った写真を特別に見せてもらいました。
ポップアップ絵本の型抜き(左)と、切抜きされたスカートのパーツです(右)。
───しかけの部分は1冊、1冊手作業で本が作られるんですね。
日本ではなかなか見られない絵本の製本風景、圧巻です!

何千枚ものスカートがひとつひとつ、手作業で張られていきます。